《第2章》 自分のからだの組織を使う「乳房再建手術」

自分のからだの組織を使う「乳房再建手術」とは
どういうものですか

患者さん自身のからだの組織(自家組織)を使う「乳房再建手術」では、背中やお腹の筋肉と脂肪組織、またはお腹などの脂肪組織を乳房に移植する方法が一般的です。

1 背中やお腹の筋肉、皮膚、脂肪を移植する方法

◎腹直筋皮弁法(ふくちょくきん ひべんほう)

腹直筋皮弁法お腹の筋肉(腹直筋)、皮膚、脂肪に血管をつけた状態の組織を胸に移植して乳房をつくる再建方法です。乳がん手術で皮膚や筋肉を広範囲に切除した人にも適した方法で、乳房のボリュームが比較的大きい方に向いています。

※お腹の組織を使った手術の際に切除されたおへそは再建されます。

◎広背筋皮弁法(こうはいきん ひべんほう)

広背筋皮弁法背中の筋肉(広背筋)、皮膚、脂肪に血管をつけた状態の組織を胸に移植して乳房をつくる再建方法です。乳がん手術で皮膚や筋肉を広範囲に切除した人にも適しています。背中にはそれほど多くの筋肉や脂肪がないので、乳房のボリュームの少ない方に向いた方法です。シリコンインプラントを併用することもあります。

2 お腹などの皮膚と脂肪組織を移植する方法

◎穿通枝皮弁法(せんつうし ひべんほう)

穿通枝皮弁法筋皮弁法のように筋肉を使わず、お腹などの脂肪組織を、脂肪組織につながった細い血管ごと胸に移植して乳房をつくる再建方法です。筋肉組織を取らないので、身体機能への影響が少なくてすみ、脂肪組織を使うため、乳房が下垂気味でも自然な再建が行えます。

※お腹の組織を使った手術の際に切除されたおへそは再建されます。

三鍋俊春 医師《専門医のコメント》

やわらかく温かい、
自然な乳房が再建できる自家組織

埼玉医科大学 総合医療センター 形成外科・美容外科教授
三鍋俊春 医師

自家組織を使う「乳房再建手術」は、手術時間が長く、傷あとが残るという点が強調されがちですが、一度手術をすれば、原則としてあとは何もしなくてもいい“メンテナンスフリー”という代えがたい特長があります。からだの組織を使うので、やわらかく温かな乳房を再建することができ、仰向けになれば体側方向に広がる、痩せたり太ったりすれば同じように大きさが変化する、加齢によって下垂するという自然さが、自家組織を使ういちばんの良さといえます。最近では、乳がんの術後に発生しやすいリンパ浮腫を、自家組織の移植によって乳房再建と同時に治療する方法も広がってきています。

自家組織を使う「乳房再建手術」の留意点は何ですか

1 手術を受ける前に知っておきたいこと

自家組織で再建した乳房には自然なやわらかさと温かみがあります。自分のからだの組織なので免疫反応が起きませんが、移植する組織を取る部分に傷あとが残り、手術時間・入院期間が長くなります。外科手術に伴う合併症のリスクにも考慮する必要があります。

◎腹直筋皮弁法の留意点

  • 下腹部に傷あとが残ります。
  • 筋肉の一部を取るため腹筋が弱くなり、腹部の手術を受けた人や、妊娠・出産を計画している人には適していません。

◎広背筋皮弁法の留意点

  • 背中に傷あとが残ります。
  • 主に筋肉で乳房をつくるため、再建した乳房が多少縮むことがあります。

◎穿通枝皮弁法の留意点

  • 下腹部に傷あとが残ります。
  • 過去に腹部の手術を受けていても行えますが、妊娠・出産を計画している人には適していません。
  • 高度な技術が必要で、手術を行える医療施設・形成外科医が限られています。

2 手術・入院期間と費用

移植する組織を採取する手術を行うため、手術時間と入院期間が長くなります。手術・入院期間および費用の目安は次のとおりです(手術・入院期間はその方の体質などによって個人差があります)。

手術時間 5〜10時間
入院期間 1〜3週間( 施設によって異なります)
入院・手術費用 30万〜60万円

※入院・手術費用は健康保険(3割負担)の自己負担額の目安です。高額医療費の払戻し制度の適用を申請すると、実質的な負担額は9万~14万円程度となります(シリコンインプラントによる手術の「手術・入院期間と費用」もご参照ください)。

《コラム》

「脂肪注入」を併用する乳房再建

「乳房再建手術」に際して、患者さんの脂肪細胞を注入する方法があります。これは主に、シリコンインプラントによる「乳房再建手術」の際、胸元のへこみやインプラントの境目のしわが目立つ場合などに補助的に使われる方法で、その部分に脂肪細胞を注射器で注入して形を整えます。短時間で行えるうえ、傷あともほとんど残りません。

注入に用いる脂肪は、専用の吸引器具を使って患者さんのお腹から採取します。これを遠心分離機にかけて脂肪細胞だけを取り出し、筋肉や皮下組織に注入します。ただし、脂肪細胞がからだの組織として定着する率が高くないので複数回の注入が必要になることがあり、一回に大量には使えないため乳房のボリュームの大きな方には向かない、健康保険がきかないなどの欠点もあります。

三鍋俊春 医師最近では、採取した脂肪組織のなかから将来脂肪細胞に成長する“幹細胞”だけを抽出・培養し、脂肪細胞と混ぜて乳房に注入する方法も開発されています。脂肪細胞だけを注入するより定着率が高いなど多くの利点がありますが、現在はまだ臨床研究の段階で、国内でも限られた施設でしか行うことができません。

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