乳房再建手術最前線リスト
乳房再建医の声

後悔のない乳房再建は、患者さんの主体的な関与があってこそ 高木美香子医師

 

高木 美香子(たかぎ みかこ) 木沢記念病院 形成外科(岐阜県)

術式 :
・自家組織 (主に穿通枝皮弁、広背筋皮弁)
・シリコンインプラント
連携病院 : (いずれも診察日は不定期)
村上記念病院
恵那メモリアルクリニック
大垣徳洲会病院
標準手術時間 :
・穿通枝皮弁 10時間、 広背筋皮弁6時間
・エキスパンダー挿入、 インプラントへの入れ替え 各2~3時間
標準入院日数 :
・穿通枝皮弁 10日、 広背筋皮弁 14日
・エキスパンダー挿入 7日、 インプラント入れ替え 5日
乳頭・乳輪形成の時期 :
・インプラント 最終手術から3か月以降
・自家組織 6か月以降

乳房再建が乳がん患者さんに明るさを取り戻してくれた

私には、“運命の人”というべき1人の忘れられない患者さんがいます。
30代後半で乳がんの告知を受けたその患者さんは、たいへん豊かで美しい胸をしておられましたが、乳房切除というショックと悲しさに、再建が決まっていても病室でただ涙を流す毎日が続いていました。それが退院後、エキスパンダーへの注水が進むにつれて暗かったお顔が少しずつ明るくなり、ある日ぽつりと、「膨らんで嬉しい…」とおっしゃったんです。数ヵ月後、インプラントへの入れ替えが終わり、乳頭乳輪の形成へと進むころには、彼女の表情もすっかり穏やかになっていました。

乳頭乳輪形成の抜糸が無事に終わった日のことです。診察室の扉を開けて出ていこうとした彼女がいきなり振り返り、「先生、きれいな胸を作ってくださってありがとう!」と、目にいっぱい涙をためて声をかけてくれました。思いもかけない一言に、厳しい現実に絶望していた彼女の姿と、そこから徐々に明るさを取り戻していった姿が一度によみがえり、私も涙をこらえきれませんでした。

そのころの私は転勤が決まっており、これから自分が長期的に何をしたいのかがまだはっきり見えていませんでしたが、乳房再建によって少なからぬ希望を取り戻していったその患者さんとの日々が、後に本格的に乳房再建の道に足を踏み入れようとした私の背中を押してくれたと思っています。

3Dシミュレーターで再建後の視覚的なイメージ把握が可能に

私が勤務する木沢記念病院は、木曽川と飛騨川が合流する旧中山道の宿場町として栄えた美濃加茂市にあり、地域がん診療連携拠点病院として遠方からも多くの患者さんが来られます。形成外科は2009年に開設され、岐阜県下ではもっとも早くから乳房再建手術を手がけてきた病院です。

地方都市の場合、病院の選択肢が豊富にあるわけではないので、患者さんが希望する術式は基本的に何でも対応できる体制をとっています。大都市部と同じくらいのレベルで乳房再建手術が受けられるようにしていくことは、私自身にとっても大きな目標です。その一環として2014年から、インプラントによる手術に「ベクトラ」という3D画像シミュレーター(※注)を新たなコミュニケーションツールとして活用しています。

これは乳房再建後の胸の形を立体的なシミュレーション画像にしてくれる装置で、再建後の胸の形を視覚的にイメージできるため、言葉だけでは伝わりにくいことも容易に説明できるようになりました。胸の形がインプラントに向いていない方も、なぜ向いていないかが一目でわかりますし、全摘手術後に胸が平坦になった状態の画像も作成できるので、手術に対する心構えにもつながります。なかには「これだったら再建しなくても大丈夫」と自ら判断される患者さんもいらっしゃいます。

患者さんご自身の主体的な関わりが欠かせません

このように再建手術の選択肢を幅広く提示することで、患者さんの意思決定を後押しできるのが最大の利点なのですが、実際にインプラントを入れたときに生じる微妙なへこみやバランス差などまでは仔細に再現することはできません。それでもこうしたものを使うことで、患者さんは漠然とした不安から解放され、具体的に心の準備をすることができます。それによって、「こんなはずではなかった」「再建しなければよかった」という後悔や落胆を少しでも減らすことにつなげていくことが一番の目的です。

患者さんが満足される手術を行うことは、私たちのもっとも目指すところでもあります。そのために私たちも努力を続けますが、何より欠かすことのできないのは、患者さんご本人が主体的に関わってくださることです。乳房再建にどんなことを期待しているか、どんな生活を送りたいか、どんな疑問や不安があるかなど、遠慮なく私たち医療スタッフにぶつけて、ご自身の納得のいくゴールを目指していって頂きたいと思っています。
患者さんが主体的に関わってくださることは、私たちも大歓迎なのです。
(取材:2016年11月)

※注【3Dシミュレーター】 顔や身体を3D撮影し、対象部位の面積やボリュームを瞬時に計測する画像解析装置。数100種のインプラントのデータを内蔵しており、インプラント挿入後の胸の形を上下左右から立体的に見ることができます。主に豊胸術で用いられてきましたが、乳房再建手術での活用も広がっています。

1回の操作で身体を立体画像として撮影

1回の操作で身体を立体画像として撮影

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乳房の全摘後およびインプラント挿入後のイメージを、上下左右から立体的に見ることができます。※画像提供:㈱インテグラル

乳房の全摘後およびインプラント挿入後のイメージを、上下左右から立体的に見ることができます。※画像提供:㈱インテグラル

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名称 木沢記念病院 形成外科
所在地 〒505-8503 岐阜県美濃加茂市古井町下古井590
診察時間 月、火、金、土曜日(要予約)9:00~(受付は8:00~11:00)
休診日 日曜、祝祭日
TEL 0574-25-2181(代表)
URL http://kizawa-memorial-hospital.jp/dep1603.php
このサイトのコンテンツについて

このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

最終更新日:2017.09.01.

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