乳房再建手術最前線リスト
乳房再建医の声

「再建しない」という選択肢もあることを知っておきましょう

草野 太郎(くさの たろう)昭和大学江東豊洲病院 形成外科 講師


術式:
 ・インプラント
 ・自家組織(穿通枝皮弁、広背筋皮弁、脂肪注入)
標準手術時間(二次再建)
 ・エキスパンダー挿入 1時間、インプラント入れ替え 1時間
 ・広背筋皮弁 4~5時間、穿通枝皮弁 8~10時間
標準入院日数:
 ・エキスパンダー挿入 1週間~10日
 ・インプラント入れ替え 4~5日
  ※局所麻酔ができる場合に限り日帰り可能。全身麻酔の場合は最低2泊3日が原則だが、
   入院が難しいときはドレーンをつけたままの退院も可能
 ・自家組織 10日~2週間
乳頭・乳輪再建の時期:
 ・乳房再建手術の3カ月後が目安(手術は日帰り)
 ・術式:乳頭は健側からの移植、皮弁の立ち上げ。乳輪は健側や鼠径部等からの植皮、タトゥー。
  もしくは乳頭・乳輪ともタトゥー
  ※タトゥーは乳頭再建術後2ヵ月以降が目安

 

乳房再建手術には、患者さんたちの人生に貢献するやりがいがあります

旗の台の昭和大学病院には、乳房の疾患に関する検査や診察を一か所に集めた「ブレストセンター」が置かれています。医師、検査技師、看護師、カウンセラーなどの専門スタッフが結集するチーム医療体制のもと、患者さんはマンモグラフィやマンモトーム、エコー等の検査から医師の診察、遺伝カウンセリングや心理面のケアなどまで、一連の医療をここ一か所で受けられるのが大きな特色です。

私は豊洲病院に所属しながら、週に一度こちらのブレストセンターでも診察を行っています。子どものころから手先が器用で、医師でなければ服飾デザイナーになりたかったほどでしたので、医療分野のなかでもクリエイティビティの高い形成外科を当然のようにめざしてきました。高度救命センターで緊急性の高い外傷治療を数多く経験し、マイクロサージャリーの技術なども身につけた後、2013年から乳房再建手術を主に担当しています。

乳房再建手術には、患者さんの前向きな人生に貢献していく大きなやりがいがあります。70代でスキューバダイビングが趣味という患者さんがおられるのですが、水着になるとき胸に詰め物をするのが大変でとおっしゃっていたのが、再建後、いきいきとダイビングを楽しんでいる写真を送ってきてくださったときは本当に嬉しかったですね。

「本当に再建したいのかどうか」、自分で考えてみることも大切です

少しでも早く退院したい、時間はかかっても手術の傷を小さくしてほしい、赤ちゃんを産みたいのでお腹は傷つけたくないなど、患者さんにはそれぞれのライフスタイルや価値観があり、手術に求めるものも異なります。形成外科医として心がけているのは、何よりもまず個々の患者さんのニーズをしっかりお聞きすること。最終的にはご本人が決めることではありますが、一人ひとりに合った術式を適切に提案していくことが、われわれ医師の重要な役割だと思っています。

もちろん事前知識をもって来院していただけるに越したことはありません。しかし、乳がん告知を受けたばかりで頭が混乱している時期に、再建のことまで勉強してきてというのも酷なことです。ネット上には情報があふれていますが、そのすべてが正しいわけでもありません。手術の方法はいかようにも組み立てることができますから、担当医とじっくり相談しながら最善の方法を考えていきましょう。

それよりも患者さんたちにお願いしたいのは、自分が「本当に再建したいのか」をいま一度しっかり考えてみてほしいということです。インプラントによる再建が保険適用になったことで、医師も再建を勧めやすくなり、患者さんたちにも再建へのハードルが大きく下がりました。それ自体は良いことなのですが、「インプラントを入れればきれいな胸になる」という面だけをみて再建に進むことがほんとうに最善なのか、ご自身でじっくり考えてみてください。保険が適用されるとはいっても、手術は気軽なものではありません。費用も時間もかかり、身体や生活面へのリスクもあり得ます。インプラントには継続的なメンテナンスも必要です。受け身に流されるのではなく、「再建しない」という選択肢もあるということを知っておいていただけたらと思います。

再建後の胸の性状に合わせたブラジャーを開発しました

服飾デザイナーへの道も考えたとお話ししましたが、実は3年ほどの開発期間をかけて、シリコンインプラントで再建した胸に合うブラジャーを考案したんです。患者さんたちの多くは、再建手術後の下着のことで悩んでおられ、医療者として何らかの提案ができないだろうかと考えた末に商品化したものです。

乳房を形づくるカーブは通常、内側が急峻で外側はゆるい曲線を描いています。これに対し市販のブラジャーは、外側を急カーブのラインにすることで胸を寄せて上げる効果を得ています。ところがインプラントは左右対称形で、しかも硬くて自在に形を変えることができないため、市販のブラジャーではどうしてもフィットしにくいのです。私が考案したのは、寄せて上げるのではなく“胸に沿わせるブラ”。再建側には術後の胸に負担をかけない緩やかなラインのカップを、健側にはノーマルなラインのカップをそれぞれ組み合わせて使えるようにしてあります。自家組織で再建した人でも、手術後にしばらく胸を安静に保ちたい方たちに広く使っていただくことができます。

乳房再建手術には、女性にとって大切な乳房の見た目を改善することで、患者さんたちのメンタル面を改善していくという大きな役割があります。その意義を日々噛み締めながら、今後もの研鑽に励んでいきたいと思っています。(取材:2018年7月23日)

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名称 昭和大学江東豊洲病院
所在地 〒135-8577 東京都江東区豊洲5丁目1-38
診察時間 昭和大学江東豊洲病院:第2・4火曜日午後、第1・3木曜日、金曜日午前  / 昭和大学病院(旗の台):月曜日
休診日 年末年始(12/29~1/3)、創立記念日(11/15)
TEL 03-6204-6489(予約)
URL http://showa-plasticsurgery.com/staff/taro-kusano/
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このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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