乳房再建医の声

「たくさんの乳房再建の経験者たちと会ってみましょう」岩平佳子医師

岩平佳子（いわひらよしこ） ブレストサージャリークリニック院長

術式 ： インプラント
連携病院 ： 聖路加国際病院、相原病院（大阪府箕面市）
星総合病院（福島県郡山市）、国立病院機構 仙台医療センター、三井記念病院
標準手術時間 ： エキスパンダー挿入 30分、インプラントへの入れ替え 45分
標準入院日数 ： 原則として日帰り手術
乳頭・乳輪形成 ： 入れ替え手術の1カ月後以降が目安。タトゥーは初回約1時間、2回目15～20分

乳房再建手術を受ける目的をまず明確に！

当院での乳房再建手術は、ティッシュエキスパンダーで皮膚を膨らませた後にシリコンのインプラントに入れ替える方式をメインとしています。
開業するにあたって重視したのは、患者さんには仕事や家庭などさまざまな事情があることに鑑みて、土日祭日にも診療することと、日帰り手術を実現することの2点でした。アメリカで勉強していたとき、インプラント手術を終えた患者さんがその日のうちに帰っていくのをみて、麻酔のかけかた次第で日帰り手術が充分可能であることを学んだ経験から、当院での手術は日帰りを前提にしています。リカバリールームで2時間以上休んでいかれた患者さんはほとんどいらっしゃいません。

再建を手がける者としてもっとも心がけているのは、患者さんが望まれる乳房をできる限りきれいにつくるということに尽きます。しかしどんな術式にも必ず限界はあります。インプラントには手術の時間が短くてすみ、体の他の部分に傷がつかないといった利点があるかわり、人工物を入れる異物感がずっと気になるという人もいます。乳房再建をお考えの方は、まず何よりも再建の目的をはっきりさせること。医師と話をしていくなかで、ご自分の生活や価値観とも照らし合わせて、譲れることと譲れないことを明確にすることが一番大切だと思います。

ただ残念ながら、医師が患者さん一人ひとりと向き合える時間はどうしても限られています。当院では、私の不在時でも患者さんとじっくりお話のできる担当ナースを起き、受付をはじめ全スタッフが患者さんたちに関する情報を共有するよう努力しています。

あふれる情報に翻弄されないで

最近は乳房再建に関する情報も増えてきて、患者さんもたいへんよく勉強しておられます。でもいろんな情報を見比べて一番いいと思った術式が、必ずしもその方に適した方法であるとは限りません。どの医師も、それぞれに得意とする術式から患者さんにお話をされると思いますが、それは方法論が異なるだけで、誰が診ても基本的な診断が大きく異なることはありません。自分の希望を叶えてくれる医師に出会うまで“ドクターショッピング”を続けることは、医師としても決してお勧めしたいことではないですね。情報の多い時代だからこそ、それに翻弄されず、自分に適したものを選ぶ力を身につけることがとても大切です。

もうひとつ、再建手術を考えている方は、患者会などの機会をとらえて手術経験者にぜひ直接お会いになることをお勧めします。手術を受けた側からの貴重な意見や具体的なアドバイスをたくさんもらえるはずです。

その一方で、乳房再建手術の存在を知らない人もまだまだたくさんいます。乳腺外科医が常に再建手術について知らせてくれるとも限りません。乳房再建手術を手がける者として、手術についてもっと知っていただくための機会を全国各地に広げること、そして次の時代を担っていく若手医師たちを育てていくことも、私たちに与えられた大きな責務だと感じています。
（取材：2012年8月）

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