第3章 自分のからだの組織を使う「乳房再建手術」

自分のからだの組織を使う
「乳房再建手術」とはどういうものですか

患者さん自身のからだの組織を使う「乳房再建手術」では、背中やお腹の筋肉と脂肪組織、またはお腹などの脂肪組織を乳房に移植する方法が一般的です。そのほかに、脂肪注入による方法もあります。

1:背中やお腹の筋肉、皮膚、脂肪を移植する方法

腹直筋皮弁法(ふくちょくきんひべんほう)

お腹の筋肉(腹直筋)、皮膚、脂肪に血管をつけた状態の組織を胸に移植して乳房をつくる方法です。乳がん手術で皮膚や筋肉を広範囲に切除した方にも適した方法で、乳房のボリュームが比較的大きい方に向いています。

腹直筋皮弁法

広背筋皮弁法(こうはいきんひべんほう)

背中の筋肉(広背筋)、皮膚、脂肪に血管をつけた状態の組織を胸に移植して乳房をつくる方法です。背中にはそれほど多くの筋肉や脂肪がないので、乳房のボリュームの少ない方に向いた方法です。

広背筋皮弁法

2:お腹などの皮膚と脂肪組織を移植する方法

穿通枝皮弁法(せんつうしひべんほう)

筋肉を使わず、お腹などの脂肪組織を組織につながった細い血管をつけて胸に移植し、乳房をつくる方法です。筋肉を取らないので、身体機能への影響が少なくてすみ、乳房が下垂気味でも自然な再建が行えます。

※お腹の組織を使った手術の際に切除されたおへそは再建されます。

穿通枝皮弁法

3:脂肪注入による方法

お腹や太ももなどから吸引した脂肪組織を、再建する部分の筋肉組織に注入して生着させる方法です。現状では実施できる医療機関が限られ、また保険適用がないため費用負担が大きくなります。日帰りや短期間の入院で行え、傷あともほとんど残りませんが、乳房の状態によって、適応・不適応があります。また、1回で再建することはむずかしく、3〜5回程度の脂肪注入が必要です。一般に脂肪注入と言われているのは、脂肪を遠心分離機にかけ不純物を取り除いた以下の①と②です。

①純脂肪
脂肪幹細胞のほか、老化した脂肪細胞を含む。
長所:脂肪注入による再建の中ではもっとも費用が安い
短所:治療回数が多い
②コンデンス
リッチ脂肪
老化した脂肪を除去。脂肪幹細胞がより高密度に含まれる。
長所:脂肪生着率が純脂肪より高い
短所:①より費用が高い

上記のほかに、脂肪幹細胞の密度を純脂肪の2倍にした③脂肪幹細胞付加脂肪、純脂肪やコンデンスリッチ脂肪に培養した脂肪幹細胞を付加した④培養脂肪幹細胞付加脂肪がありますが、いずれも「再生医療等安全確保法」の規制対象となり、さまざまな義務が課されます。そのため③と④を行う医療機関は厚生労働省の認可が必要となり、全国でも数か所に限られ、費用も高額です。

自分のからだの組織を使う
「乳房再建手術」の注意点は何ですか

1:手術を受ける前に知っておきたいこと

自分のからだの組織による乳房再建手術には、以下の特徴があります。

  • 自然なやわらかさとあたたかみのある乳房を再建できる
  • 自分のからだの組織を使うので、免疫反応は起きない
  • 移植する場合、組織を取る部分に傷あとが残る
  • 移植する場合、手術時間・入院期間が長くなる
  • 外科手術による合併症のリスクがある

2:手術法ごとの注意点

体形やライフステージによって、適応する手術法は変わります。
それぞれの注意点は以下のとおりです。

腹直筋皮弁法

下腹部に傷あとが残る
筋肉の一部を取ることで腹筋が弱くなり、腹部の手術を受けた方や妊娠・出産を計画している方にはおすすめできない。

広背筋皮弁法

背中に傷あとが残る
おもに筋肉で乳房を再建するため、再建した乳房が多少縮むことがある。

穿通枝皮弁法

下腹部に傷あとが残る
つないだ血管がつまると組織の壊死がおこる。また、顕微鏡下で血管をつなぐ高度な技術を必要とするため、手術を行える医療機関が限られる。

脂肪注入法

傷あとは残らないが、
脂肪の採取部のケアが必要

短期間の入院や施設によっては日帰りで行える。保険適用外のため、費用が高額になる。手術を行える医療機関が限られる。

3:手術時間・入院期間と費用

自家組織を移植する乳房再建手術では、再建手術の前に、移植する組織を採取する手術を行います。そのため、インプラントを使う再建手術と比べて手術時間と入院期間が長くなります。手術時間・入院期間と費用の目安は以下のとおりです。脂肪注入による再建は自費診療のため、施設によって費用が異なります。

手術時間 5〜10時間
入院期間 1〜3週間(施設によって異なります)
入院・手術費用 30万〜60万円(自己負担3割の場合)

※現在、保険適用になっている自家組織による再建の手術費用です。また、高額療養費制度を利用すると、実質的な負担額は9~14万円程度となります。

関堂 充

これからの「よい人生」のために
乳房再建手術がある

筑波大学附属病院
形成外科 教授
関堂 充

自家組織を使って再建する乳房は、「あたたかくてやわらかい」という大きな特長があります。インプラントを使う再建手術と比べて、一度の手術時間や入院期間は長くなりますが、原則、1回の手術で乳房が形成されます。再建した乳房は体重の変化や時間の経過によって自然に変化し、がんの再発や発見、予後に悪影響を与えることもありません。一方で、組織を取る部分には大きめの傷あとが残り、手術直後に痛みや皮膚のつっぱりを感じることもあります。どこから組織を取るか、適応する手術法は人それぞれです。自家組織を選ぶか、インプラントを選ぶかはご本人の生活スタイルや希望によります。また、自分の乳房に対するこだわりも人それぞれ。乳頭や乳輪の再建は不要という方もいれば、乳房の左右差をとても気にされる方もいます。乳がん手術と同時に再建する方もいれば術後10年、20年たってから、再建される方もいます。
疑問や要望など、気になることがあれば医師に相談してください。

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