• 公開日2018.07.19
  • 最終更新日 2024.01.17

乳房再建手術経験者の声

「先生って天才!」と言いたくなるほどきれいな胸を再建していただきました

北海道 SCさん(40代)

手術方式:「一次二期再建」
(乳がん手術と同時にエキスパンダー留置。3ヵ月後に感染症により抜去。
7ヵ月後に穿通枝皮弁により再建)
・乳がん手術
2015年4月 右乳房温存手術
執刀 札幌ことに乳腺クリニック 下河原 出医師
・乳房再建手術
2015年6月 断端陽性により皮下乳腺全摘。同時にエキスパンダーを留置
執刀 札幌ことに乳腺クリニック 三神 俊彦医師
蘇春堂形成外科 矢島 和宜医師
2015年9月 感染症によりエキスパンダー抜去 乳頭壊死
2016年5月 腹部をドナーにした穿通枝皮弁法で乳房再建
2018年7月 タトゥーによる乳頭乳輪再建
執刀 蘇春堂形成外科 矢島 和宜医師
術前治療:なし
術後治療:ホルモン剤(ノルバティクス)5年間

温存術ですべて終わるはずが一転。全摘・再建という事態に動揺しましたが・・・

下着の内側にみつけた小さな染みに、右の乳頭から出血しているようだと気づいたのは2015年の春のこと。すぐ近くの病院を受診しました。検査で3cmほどの陰が認められましたが、すぐにははっきりした診断がもらえず不安に感じていたところ、知人から乳がん治療に定評のある札幌ことに乳腺クリニックを勧められて再受診。細胞診と針生検を経て、乳がんの告知を受けました。

ステージ1で転移もなく、抗がん剤治療も不要。わずかな浸潤があるため広めに取ってはおくけれども、温存術で対応できるとの診断。乳房の形にもほとんど影響はないだろうとのことでしたので、すべて主治医にお任せし、あとはホルモン治療と放射線照射を受けさえすれば、私の乳がん治療はすべて終わるんだとすっかり安心していました。

ところがその2ヵ月後。術後の病理検査で断端陽性(※)とわかり、皮下乳腺全摘手術を行いましょうとのお話にびっくり。「再建するときれいな胸になりますよ」と言われましたが、二度の手術、しかも全摘という事態をなかなか受け入れることができません。もやもやした思いを抱え、地元の大学病院にセカンドオピニオンを求めてもみたのですが、「抗がん剤治療が必要。再建は乳がん完治後でなければ行わない」と告げられ、ようやく主治医の提案を受け入れる決心がついたのでした。

※断端陽性
乳房温存手術の際に切除した組織の断端(切り口)を精密に調べ、がん細胞が残存している状況を断端陽性といいます。手術中にも術中迅速診断による組織検査を行いますが、正確を期するために術後の病理検査を行います。断端陽性の場合は、追加切除を行なうか乳房の全摘手術を行うことになります。

人工物が合わない体質。エキスパンダーは抜去し、自家組織による再建へ

全摘・再建と決まったことで、乳房再建をよくご存知の三神俊彦先生が主治医となり、蘇春堂形成外科の矢島和宜先生が再建手術を行ってくださることになりました。再建の方法や時期についてはなかなか気持ちが定まらず、じっくり考える時間を取れるよう、乳がん手術と同時にまずエキスパンダーを入れていただきました。

ただ私の場合、エキスパンダーに水を足すとものすごく強い痛みを感じるのです。いま思えば、異物に対し過敏に反応する体質なのでしょう。エキスパンダーを入れて2ヵ月ほど過ぎたある日、突然の高熱に見舞われてしまいました。めったに起きることではないそうですが、感染症によるものと診断され、先生と一緒に検討した末、エキスパンダーを抜いてしばらくそのままにしておき、再建手術も人工物(インプラント)ではなく、お腹の脂肪を使う穿通枝皮弁法で行うことに決めました。

予約の関係などもあって、再建手術まで7ヵ月ほど待たなくてはなりませんでしたが、11時間におよぶ手術の末に矢島先生に作っていただいた胸のほんとうにきれいで自然なこと。「先生ってほんとうに天才!」って思わずにいられませんでした。形成外科医というより、職人で芸術家だと思いました。その後も何度か細かい修正をしていただき、左右バランスの整ったきれいな胸元にとても満足しています。途中で乳頭が壊死して取れてしまったのですが、タトゥーで再建しなおすことができました。

再建を受ける条件が揃っているなら、やらない選択はないと思います

ふだんはピアノ講師をしつつライブハウスに勤務しているのですが、矢島先生にはデコルテ部分もとてもきれいに作っていただいて、ライブのときは特に胸元の開いた服を着るようになりました。まわりの方々は、再建にはまったく気づいていないみたいです(笑)。

がん告知を受けたときから、私は乳がん経験者の方たちのブログはあえて読まないようにしてきました。辛い経験談が書かれていても、それはその方の感じ方。私の役に立つ情報ではありません。たしかに最初は、二度も手術するという現実がなかなか受け入れられず、感染症も嬉しい経験ではありませんでしたが、余計な情報に振り回されず、主治医を信じてお任せしたことで良い結果を得られたと思っています。

再建するしないはもちろん個人の選択です。でもせっかく再建手術を受ける条件にあてはまるのなら、保険の適用もあるのですし、ぜひ前向きに考えればよいと思います。私自身、いろいろありましたけれど、こうしてきれいな胸を取り戻すことができて、再建手術を受けて本当によかったと心から思っています。

*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。

(取材:2018年6月30日)

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このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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