インプラント保険適用の承認について

乳腺外科医に聴く

医療側の技術と意識の全体的レベルアップが急務。
技術水準に対する評価基準の策定も必要です

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会理事
昭和大学医学部 乳腺外科教授
昭和大学病院ブレストセンター長 中村清吾

乳房再建手術を受けられる患者さんの裾野が大きく広がります

乳房再建手術に用いるティッシュエキスパンダーやインプラントの保険適用は、乳がん手術を受けた患者さんたちが長らく待ち望んできたものです。これまでは乳房を全切除した後、費用の問題でインプラントによる再建を断念する方は決して少なくありませんでした。逆に再建手術には費用がかかるため、少しでも膨らみを残せるよう温存手術を希望して受けることのできた方でも、乳房に左右差が生じることは避けにくいものでした。

このようにインプラントが保険診療の対象ではなかったため、乳がん手術が本来あるべきものとは少し歪んだ形で運用されてきた面があることは否めません。しかしインプラントの保険適用が始まったことで、今後は乳房を全切除してきれいな胸を再建するという方法がより広く選択されていくものと思われます。

患者さんへのわかりやすい説明体制づくりがまず急がれます

これまではインプラントによる再建は自由診療の範疇でしたから、再建手術を行なっていない病院の乳腺外科の医師には、患者さんに手術に関する詳しい説明を行う必要はほとんどありませんでした。今後は手術を行う認定医療機関が増えることで、乳房再建を望む患者さんの裾野は大きく広がり、医師の側にも手術について適切な説明を行う場面が増えていきます。

患者さん自身も、再建によって自分の胸がどうなるかを具体的に想像することはなかなか難しいものです。今回はラウンドタイプのインプラントだけが保険適用対象となりましたが、これもどんな方にも適しているというわけではありません。患者さんがさまざまな再建の方法について、長所・短所を含めてきちんと理解し、自分にもっともふさわしい術式を選択できるよう、私も看護師さんたちと一緒に、DVDなどによるわかりやすい説明用資材を作っていきたいと考えています。

アメリカには、どんなインプラントを入れると術後の胸がどうなるかを見せてくれる豊胸用シミュレーターのようなものがあり、日本でも再建手術用に同じようなものを作ることができれば、より多くの人に再建手術が受け入れられていくかもしれませんね。

医師の技術レベルと経験を評価する基準の策定も急務です

認定医療機関の制度が始まったことで、今後は乳房再建手術を手がける医師の数も乳腺外科・形成外科ともに増えていきます。そのときに重要になるのが医療側の全体的な技術レベルの向上です。

外科の分野では、領域を問わず、その技術において一定水準にあると認められた医師が手術を行うという基本があります。しかしながら、インプラントによる乳房再建手術は保険診療下で行われてこなかったため、乳腺外科や形成外科の分野での経験が豊富な医師でも、乳房再建手術における経験と技術の水準を評価する基準がありません。個人的な意見ですが、その医師がどれくらいの技術と経験を持っているかを評価する基準を策定していくことが急務だと思っています。

インプラントによる再建手術は、自由診療だったこともあり、優れた技術と豊富な経験を持った、大学病院等に属さない形成外科医が各地にたくさんおられます。早期に全体的な技術水準の向上を図るため、こうした医師に指導的立場を担っていただき、経験や技術を実地に伝える役割を果たしてもらうような仕組みを導入することができれば、技術レベルの底上げにも大きく寄与するものと思います。

乳腺外科と形成外科の連携体制で質の高い乳房再建手術を実現

と同時に、乳腺外科と形成外科の双方による連携体制の確立も今後の重要な課題です。乳腺外科の立場からいえば、われわれに第一義的に求められるのは何よりもまず乳がんをきれいに取り除くことですが、その先にはきれいに胸を再建するための手術が待っています。とりわけ、乳房の見た目の美しさと再発リスクの最小化のバランスをどう考えるかは非常に難しいところで、医師たちは多くの経験を重ねながら、ケースごとに適切な判断を下していけるようでなくてはなりません。

2012年3月に日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が創設された目的も、まさに乳腺外科と形成外科が一緒になって、コミュニケーションを図りながら乳房再建手術の技術的向上に努めていくことにあります。手術におけるさまざまな技術的な重要点を相互にシェアし、全体としての技術レベルを高めていくことは、今回こうした制度が始まったことでますますその意義を高めていると考えます。

乳房再建手術は決して簡単なものではなく、乳腺外科医や形成外科医としての専門的経験があれば容易に行えるというものではありません。安易な考え方で手術に臨むようなことは強く戒められねばなりませんし、学会としても、そのために必要な情報発信をさまざまな場所で行い、医療側の全体的な意識の向上に努めていく必要があると思っています。

(取材:2013年7月9日)

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