• 公開日2019.09.19
  • 最終更新日 2023.05.16

乳房再建医の声

「乳房再建手術」には3つの大きな意義があります

寺尾 保信(てらお やすのぶ)
がん・感染症センター 都立駒込病院 形成再建外科 部長 

術式:
 ・自家組織(穿通枝皮弁、広背筋皮弁)
・脂肪注入(主にインプラントや広背筋皮弁法との併用。現在は自費診療)
・乳房インプラント(現在は主に自費診療)

標準手術時間:
 ・エキスパンダー挿入 一次再建=1時間、二次再建=30~40分
・インプラント入れ替え 1時間~1時間15分
・穿通枝皮弁 4~6時間
・広背筋皮弁 3時間

標準入院日数:
 ・エキスパンダー挿入 一次再建=1週間 二次再建=3~4日
・インプラント入れ替え 3泊4日(全身麻酔の場合)
※局所麻酔ができる場合は2泊3日
・穿通枝皮弁 1週間~10日
・広背筋皮弁 1週間
※ドレーンが抜けにくいときは、入院の延長または術後通院による穿刺で対応

乳頭・乳輪再建の時期:
 ・自家組織:乳房再建手術後3カ月以上後が目安。手術は日帰りないし1泊
・インプラント:入れ替えと同時に実施
・術式 主に皮弁の立ち上げ+タトゥー。希望があれば健側からの移植

 

患者さんが再発リスクにさらされず、長く人生を楽しんでいくために

当院の形成再建外科では腫瘍切除後の再建に力を入れており、なかでも乳房再建手術の症例数が多いことが特色です。乳がん患者さんが再発のリスクにさらされることなく、長くその後の人生を楽しんでいけるよう、私たちも乳腺外科との密接な連携のもとで乳房の再建に取り組んでいます。

乳房再建手術には、大きく3つの意義があると考えています。ひとつは患者さんの将来的なQOL(生活の質)の向上です。温泉に行きたい、好きな服が着たい、趣味のダンスがしたいなど、何かをしたいという前向きな気持ちを現実のものにしていくことです。2つめは患者さんの精神面の治癒です。乳がん告知を受けたばかりの患者さんにとって、乳房が再建できると知ることは、不安な心を落ち着かせ、がん治療に臨むモチベーションの向上にもつながります。

3つめに、治療の選択肢が広がるということです。当院では2005年から、無理に温存治療(部分切除)するよりも全摘をという方針を取っています。全摘以外に選択肢がない場合は致し方ありませんが、温存治療で問題ないと判断される患者さんに対しても、乳房再建という選択肢を必ず示し、その上でご本人が希望されれば温存治療を選ぶこともできれば、“全摘+再建”という選択をすることもできます。

ほかでもない、患者さん自身の乳房なのですから

当院で温存治療か可能と判断された患者さんの約4分の1は“全摘+再建”を選んでいます。その患者さんたちは、全ての再建患者さんの約2割になります。再発の不安を抱えながら暮らしていくより、全摘してすっきりしたいという選択肢は当然あってよいものだと思います。

一方で、温存治療の適用がありながら全摘手術を受け、その後に乳房再建手術を受けていない人も少なくありません。その理由はまさに人それぞれで、言い換えれば、乳房再建をするかしないか、温存か全摘か、再建をするならどんな方法で行うかは、患者さんが決定すればよいのです。ほかでもない患者さん自身の乳房なのですから。もちろんその前提として、患者さんには考え得るあらゆる選択肢を示し、リスクについても十分な説明を提供していることは言うまでもありません。

みなさんの経験を次の患者さんのために役立ててください

患者さんのご希望を聞かせていただき、お気持に応えられるよう工夫と努力を重ねていくことで、我々形成外科医の技術力もずいぶん向上してきています。10年も前なら不可能といわれていたことも、さまざまな技術の発達によって実現可能となってきています。

たとえば乳房が下垂している患者さんの場合、健側の乳頭の位置を上げる挙上術を行えば、整容性に優れた美しい乳房の再建が可能です。しかし眼前に控えた乳がん治療のことで頭がいっぱいになっている方に、健側にもメスを入れるという提案を受け入れる心の余裕があるとは限りません。手術を工夫することで、下垂した形を再建することも可能になりました。私たちが考える条件に合った再建をするのではなく、患者さんが望む再建ができるようになってきたのです。まずは乳がん治療と向き合う患者さんの心理的負担を軽くし、その中で少しでも満足度の高い結果を出していくことが私たち形成外科医の役割。患者さんにとって何より大切なのは、乳がん治療にしっかり取り組んでいただくことです。

ただ、われわれ男性医師には女性の気持ちや価値観が明確につかみにくいのも事実です。患者さんにいろいろな意見を聞かせていただけるほど、私たちの理解や認識も深まり、それがやがては他の患者さんたちにもプラスとなっていきます。再建について何か思うことがあるときは、遠慮なく医師に伝えてください。それが乳房再建全体の進歩や向上につながっていきます。
(取材:2019年6月25日)

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名称 がん・感染症センター 都立駒込病院
所在地 〒113-8677 東京都文京区本駒込三丁目18番22号
診察時間 火曜日午前、水曜午前、金曜日午前 ※2019年6月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。
休診日 毎週日曜日、祝日、年末年始(12月29日~1月3日)
TEL 03-3823-2101(代) 03-3823-4890(予約専用)
URL http://www.cick.jp/keiseisaiken_special/about.html

このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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