「乳房再建を受ける患者さんを、もっと増やしていくために」
関堂 充(せきどう みつる)
筑波大学 医学医療系 形成外科 教授
術式:
・インプラント
・自家組織(穿通枝皮弁、広背筋皮弁)
標準手術時間:
・エキスパンダー挿入 1.5時間
・インプラント入れ替え 1時間~1時間半
・穿通枝皮弁 8時間
・広背筋皮弁 4時間
標準入院日数:
・エキスパンダー挿入 1週間
・インプラント入れ替え 1週間
・穿通枝皮弁 2週間
・広背筋皮弁 10日
乳頭・乳輪再建の時期:
再建手術後3~6カ月後
術式は皮弁の立ち上げ、植皮、健側からの移植、タトゥーなど
連携病院:
筑波学園病院-外来・手術 茨城県立中央病院-手術
乳房再建手術のやりがいは患者さんの喜びを実現していくこと
私が大学を卒業した1988年頃、乳房再建は日本ではごく少数でした。卒業の数年前、乳房再建の草分けとされる先生方の講義を受け、形成外科の技術でここまでの再建ができるということへの率直な驚きが、いまの私の原点となっているように思います。
乳房再建はただ膨らみを作ればよいというものではなく、デコルテのラインを出せるようになりたい、温泉に行けるようになりたい・・・など、手術に期待するものは患者さんそれぞれに異なります。正面からの見た目が気になる人もいれば、下着をつけたときの感触やバランスを重視する人もいます。着物を着たときに胸元が膨らみすぎないよう、大きめのインプラントは避けたいという方もおられました。
こうしたことは、患者さんとお話を重ね、一人ひとりのライフスタイルや価値観を知ることでだんだん把握していけるものです。初診のときは表情も暗く地味な服装だった患者さんが、再建が終わって最初の外来に来た時は、表情も服装もすっかり明るくなっていたということもよくあります。それくらい女性にとって乳房には特別な意味があるわけで、患者さんの喜びを実現する乳房再建手術に関わることは、形成外科医としての大きなやりがいでもあります。
乳房再建率を上げるにはいくつもの課題があります
近年、再建手術を受ける患者さんの数は増えていますが、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の調べでは、年間の症例数はここ数年6000件程度のまま大きく増えてはいません。乳がん経験者の乳房再建率は、アメリカでは30%近いのに対し、日本は17%程度で、まだまだ潜在的なニーズはあるものと思われます。
再建率が伸びない理由はさまざまに考えられると思いますが、ひとつには手術が受けられる施設がまだ少ないということ。これには地域差の問題もあります。大都市部には再建手術を行う医療機関が集中しているのに、地方へ行くと乳房再建手術の実施認定施設でも実際にはほとんど手術を行っていないところもあります。少なくとも、各地域の中核となる医療施設で乳房再建手術が受けられることは患者さんのためにも必要で、そのためには、人工物から自家組織までの基本的な術式を身に着けた形成外科医を育成し、各地での乳房再建手術を牽引してもらう環境を整えていかねばなりません。
もうひとつは、乳房再建手術について、さらに多くの方々に知らせていくことです。乳がん患者さんに対しては、乳腺外科から再建が出来るというお話をしてもらい形成外科へ紹介いただくのがとても重要なことなのですが、乳腺外科医も切除以外の十分な知識がないことがまだ多いのが現実です。乳腺外科から形成外科へという道筋を強化することによって、乳房再建手術を受けられる患者さんを増やしていきたいと考えています。
患者さんへの適切な情報提供で正しい理解を得ていくこと
また患者さんたちに対しても、もっと容易に情報が得られる仕組みを整えていく必要があります。インターネットを使えば色々なことがわかる時代とはいえ、調べる手段をご存じない方も多く、不正確な情報が独り歩きしている場合もあって、十分な理解を伴わないまま再建手術に臨んでしまう患者さんは少なくありません。
理解不十分のまま再建手術に臨み、思っていたのと違うという理由で治療を途中でやめてしまうという事例も増えていて、こうした状況はたいへん残念なことだと言わざるを得ません。またインプラントについては、将来的に入れ替えが必要と思い込んでいる人が多く、これについては、定期的な診察でインプラントの破損、被膜拘縮などの合併症、さらには問題となったBIA-ALCLの兆候などが確認されなければ、入れ替えの必要はありません。
乳がん患者さんたちが安心して乳房再建に臨み、明るい人生を過ごしていくことができるよう、私たち医師もさらに努力していきたいと思います。
(取材:2019年7月12日)
名称 | 筑波大学附属病院 | ||
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所在地 | 〒305-8576 茨城県つくば市天久保2丁目1番地1 | ||
診察時間 | 受付・8:30~16:30 ※2019年7月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。 | ||
休診日 | 土日、祝日、年末年始 | ||
TEL | 029-853-3570(予約専用。全科予約制) | ||
URL | http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/shinryouka/hg.html |