• 公開日2019.10.27
  • 最終更新日 2023.05.16

乳房再建医の声

「再建手術後のフォローアップ検診を欠かさず受けましょう」

山川 知巳(やまかわ ともみ)
三井病院(埼玉県川越市) 形成外科・美容皮膚科 

術式:
・インプラント
・健側のタッチアップ(豊胸術、縮小術、挙上術)
・自家組織(穿通枝皮弁、広背筋皮弁)
*自家組織再建は埼玉医科大学総合医療センターへ紹介

標準手術時間:
・エキスパンダー挿入  一次再建 1.5時間、二次再建 1時間
・インプラント入れ替え 1.5時間

標準入院日数:
・エキスパンダー挿入  1~2週間
・インプラント入れ替え 1週間~10日

乳頭・乳輪再建の時期:
乳房再建の半年後が目安
術式は、皮弁の立ち上げ、乳頭移植+皮膚移植、3Dアートメイクなど

連携病院
埼玉医科大学総合医療センター

 

女性だから患者さんと共有できるものがたくさんあります

医師を志した当初は、眼科か産婦人科に専門を絞るつもりでしたが、研修医のときに形成外科の手術をみて、さまざまな部位の機能や整容性の回復をめざす形成外科の役割に大きなやりがいと面白さを感じ、いまの道へと方向を転換しました。

外科系ではまだまだ女性医師の少ない時代で、患者さんからも頼りなく感じられているのかなぁと思うことも少なくありませんでしたが、乳房再建に関しては女性医師が担当することに安心感を抱いてくださる患者さんも多く、女性という利点を感じながら治療に取り組んでくることができました。男性医師のほうが信頼できそうという方もおられるので、あくまでそこは人それぞれですが、女性だからわかる気持ちの揺れ動きや下着の悩みなど、患者さんと共有できることは実際にたくさんあります。

内臓の手術とは違って、身体の表面に傷が残る乳がん手術では、傷が癒えた後も手術を受けた現実と日々向き合うことになります。人前で身体を見せるのが辛く、温泉旅行に誘われても断る理由を探すようなことが続くと、付き合いの悪い人だと思われているんじゃないか・・・などという思いが重なり、次第に消極的な生き方を選んでしまう方は少なくありません。乳がんになったことを少しでも忘れて、積極的に人生を楽しむことができるのであれば、それだけで乳房再建にはとても大きな意義があると思います。

やりたいと思ったときが“再建のやりどき”

患者さんには何よりもまず、ご自分が乳房再建というものに興味をもち、手術を受けてみたいと思ったその気持ちのまま、率直に受診してみていただきたいですね。インターネット上には豊富な情報があふれていて、自分の中でさまざまにイメージするものもあると思いますが、どんな再建ができるか、どんな術式が適しているかは受診してみてこそわかることです。まずは思い立ったら受診してみてください。初診の場ですぐ意思決定する必要はありません。その日は一度自宅に戻り、一晩二晩考えてみて、気が乗らなければやめてもいいし、やっぱり再建したいと思ったらまた来ていただくというくらいの感じでいいと思っています。まさに再建は、やりたいときがやりどきなのです。

医師として心がけているのは、もちろん患者さんのご希望に沿った再建を実現することです。とはいえ、医師にもすべての希望を叶えられるわけではありません。なぜ希望の方法では難しいのか、ほかにどんな方法がとれるかなど、できる限りの情報を提供することで、患者さんの理解と納得を得ていく時間を大切にしたいと思っています。

形成外科でのフォローアップは決して欠かさないようにしましょう

乳房再建手術を手掛ける病院が全国に広がり、患者さんが大都市部まで出かけていかなくても手術が受けられる環境が整ってきました。ただ、たしかに同じ病院で“一次再建”、すなわち乳がん手術から再建手術までひとつながりで受けられれば理想的ですが、なかには乳房再建手術にあまり慣れていない病院があるのも事実です。乳がん患者さんには、まず乳がん手術を受け、そこから改めて再建に向けて情報収集を行うという選択肢もありますから、決して再建手術を焦る必要はありません。その意味では、乳がん手術から時間をおいて行う“二次再建”をしっかり行える医師を全国にたくさん育てていくことが、私たち医療者側の大きな課題です。

逆に、乳がん治療から再建まで同じ病院で受けることの利点として、年に1~2回の乳がんのフォローアップ検診の際に形成外科にも立ち寄ってもらいやすいということがあります。再建手術を別の病院で受けてしまうと、不具合を自覚しない限りなかなかフォローアップには行かないという人が実は少なくありません。しかし特にインプラントでの再建の場合は、被膜拘縮などの合併症や、問題となったBIA-ALCLの早期発見などのためにも、定期的な検診は欠かさないようにしていただきたいと思います。

またインプラントでの再建は、時間の経過とともに胸の形やバランスなどが変化してくることもありますので、私たち医師にも患者さんのことを長期にわたって診ていきたいという思いがあります。しばらく検診に行っていないという方も、決して敷居が高いと感じる必要はありませんので、ぜひとも毎年受診してみるようにしてください。

(取材:2019年7月13日、更新:2022年11月2日)

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名称 三井病院 形成外科・美容外科
所在地 〒350-0066 埼玉県川越市連雀町19
診察時間 月・火・木・金曜日(午前・午後)※2022年11月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。
休診日 毎週日曜日、祝日、年末年始
TEL 049-222-5321
URL https://mitsui-hospital.com/service/departments/plastic-surgery/

このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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