乳房再建手術最前線リスト
乳房再建手術経験者の声

術中も術後も痛みに耐え、5回にわたる脂肪注入で再建を実現

東京都 MRさん(50代)

 

 

 

 

 

手術方式:「二次再建」
(乳がん手術後、複数回にわたり脂肪注入することで再建)

・乳がん手術
2016年4月 右乳房全摘手術
執刀 昭和大学病院 乳腺外科 中村清吾医師
・乳房再建手術
2016年12月 乳房再建術開始 脂肪注入1回目(ドナー:腹部)
2017年3月 脂肪注入2回目(ドナー:右もも内側)
2017年12月 脂肪注入3回目(ドナー:左もも内側)
2018年5月 乳頭乳輪再建手術
2018年12月 脂肪注入4回目(ドナー:両もも裏側)
2019年12月 脂肪注入5回目(ドナー:両腕および腰まわり
執刀:くさのたろうクリニック 草野太郎医師
術前治療:抗がん剤(FEC、パクリタキセル)、ハーセプチン:1年間
術後治療:ホルモン剤(ノルバティクス)5年間(服薬継続中)

「乳がん低リスク」と思い込み・・・・宣告直後は子どもの未来を思って眠れない日々

右胸にしこりのようなものがあると気付いたのは、2015年の春です。身内に乳がん経験者もいませんし、授乳の経験もあるので、自分は低リスクタイプと思い込み、生理前に特有の胸の張りだろう…と放置していました。その後、9月に受けた健康診断の結果「要精密検査」の連絡が来ても、病理検査を受けても、まさか自分が乳がんのはずはない、と。だから「ステージⅡの右乳房乳がん」と告げられた時は、本当に頭が真っ白になりました。子供は当時8歳と5歳。悲観して眠れない日々がしばらく続きました。

私の乳がんの大きさは4センチで、切除が必要との診断でした。それならすぐにでも取り除いて欲しいと焦る気持ちになりましたが、担当の中村先生からは「抗がん剤の効き目を確認する必要がある」と説明があり、術前化学治療を開始。抗がん剤は3週間おきに8回投与し、合わせてHER2陽性に対する投薬も行いました。効き目は顕著に見られ、当初4センチあったがんが、数ヶ月の間に数ミリまで小さくなり、しこりも消えたのは驚きでした。この頃からようやく治療への希望を持つことができ、夜も眠れるようになったのです。

手術は部分切除でも可能との方針が示されましたが、ここでも頭をよぎったのは、子供たちのこと。再発するリスクを最大限減らしたい、後悔したくない、と2016年4月に、右胸を全摘出しました。

自家組織による再建を選択

昭和大学病院では、週に一度、形成外科の先生の診察日があり、早い段階から乳房再建についても相談できる環境が整っていました。ちょうどインプラントが保険適用になり急速に広がっていた時期でしたが、外国製のインプラントで私の乳房サイズに適したものがなく、担当医の草野先生から示されたのが、当時“画期的な方法”として認知され始めていた「脂肪注入」での乳房再建だったのです。(注:手術方法についてはこちらを参照)初めて聞く治療方法でしたが、詳しく説明を受けて納得し、手術に先立って脂肪注入での再建が決定。

全摘手術から9ヶ月後の2016年12月から、草野先生のもとで脂肪注入による乳房再建を開始しました。汗をかくと新陳代謝が活発化して脂肪の生着率を阻害するため、夏の暑い時期は避け、注入後はできるだけ体を温めないように配慮する必要があります。

脂肪注入は日帰り手術で、局部麻酔下で行われます。意識もはっきりしていますので、自分の脂肪が吸い取られたり、掻き出されたり、遠心分離器にかけられたりする音も聞こえます。痛みは脂肪吸入時だけでなく帰宅後もしばらく続き、両ももの裏側から脂肪を取った時は、トイレの便座に座るたびに激痛が走り、かなり苦労しました。

毎回、脂肪注入を終えると「こんなに痛いこと、もう二度としたくない!」と強く思いましたが、時間が経つとともに、吸入口周辺の青あざは虫刺されくらいの傷になりますし、痛みの記憶も遠ざかるから不思議です。脂肪の中でも生着しやすいものとそうでないものがあり、私の場合、1回目のお腹の脂肪は繊維質が多くてあまり良くない脂肪だったようですが、太ももの内側の時は先生が「いい脂肪だね!」と褒めてくださって(笑)たくさん取れたようです。こうして、のべ5回にわたって脂肪を注入し、2019年12月に再建を終えました。

脂肪注入は保険適用になりませんが、乳頭乳輪再建手術は保険が適用されました。乳頭は左の健側乳頭を、乳輪は鼠蹊部の皮膚をそれぞれ移植。自らの脂肪を注入して膨らみを取り戻した乳房はパッと見た感じでは再建したことに気づかないほど自然で、大満足の仕上がりです。

自分のライフスタイルや条件に合う再建法を、納得して選ぶことが大切!

脂肪注入の際の痛みだけではなく、抗がん剤の影響で髪質が変わり、乳房切除後はしばらく傷口の痛みや違和感もありました。しかし、髪はスタイリングでアレンジできますし、胸の痛みも和らぎ、今では乳がんのことを忘れてしまう時間も多いくらいです。

これから乳房再建手術を受ける方には、主治医にしっかり話を聞き、ご自身のライフスタイルや条件に一番合う方法を、しっかり選んでほしいと思います。

特に、脂肪注入に関する情報は限られています。脂肪注入は脂肪の性質や、乳房のサイズ、放射線治療の有無などに影響され、誰にでも適用されるものではありませんし、自由診療ですので経済的な負担も大きくなります。脂肪注入時の痛みも、避けて通ることはできません。(痛みに弱い方は全身麻酔の方法もあります。その場合は一泊入院の必要があります)疑問が無くなるまで主治医としっかり相談すべきだと思います。

私にとっては、脂肪注入でよかったと思っています。盲腸や二度の帝王切開など、乳がん以外でも何度も身体にメスを入れてきましたので、再度メスを入れずに自家組織で乳房再建できたのは幸運でした。余談ですが、吸引した脂肪のうち余剰分を健側である左胸にも注入してもらえたので、左右ともに以前よりもバストアップしたという思いがけないプレゼントがありました。腰まわりから脂肪を吸引した後は、手で触ってわかるほどのくびれも生まれ、5回も痛い思いをしただけのことはあったかな、と思っています。(笑)

長女は今年、中学生になりました。長男は小学4年生。コロナ禍ということもあり、子供たちとともに自宅で過ごす時間も多く、将来について前向きに考えられることの喜びを、今、改めてかみしめているところです。

(オンライン取材:2020年8月)

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このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

最終更新日:2020.08.22.

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