手術についてはもちろん、術後の生活や下着のことなども、遠慮なく相談して欲しい
奥村誠子(おくむらせいこ)
愛知県がんセンター病院 形成外科 医長
術式:
・自家組織(穿通枝皮弁 ドナーは腹部、広背筋皮弁)
・インプラント
標準手術時間:
・自家組織 穿通枝皮弁 8時間、広背筋皮弁 6時間
・インプラント
乳がん手術と同時の場合:2時間
そのほかの場合:エキスパンダー挿入 2時間弱
インプラントへの入れ替え1~2時間
標準入院日数:
・自家組織、インプラントとも約2週間
乳頭・乳輪再建の時期:
・再建手術の1年後
同姓として、悩みに寄り添いたい
専門医として乳房再建に携わるようになったきっかけは、前任の病院で「乳房再建は、患者さんの気持ちが分かる女医に向いているのでは」と勧められたこと。当時は、形成外科分野全般をオールマイティに担当したいという想いがあったのですが、実際に乳房再建を中心に関わり始めると、その奥深さに魅了され、やりがいを感じるようになりました。
男性医師であっても、過去の患者さんの事例や、女性の看護師さんのご意見などを交えて、しっかり患者さんに向きあい、アドバイスしてくださいますので、治療において男女差はありません、それでも下着のことや生活上の不安など、本当にちょっとしたことで、「こんなことお医者さんに聞いていいのかな」と患者さんが思いがちなところは、同性として共感できますし、先回りして患者さんの想いを汲み取ったり、自らの実体験に重ねて答えることができるということは、女性医師ならではの良い点かなと思っています。
初診は30分以上かけて個別相談
術式選択の考え方は人それぞれですので、患者さんご自身が納得して決めることが大切です。深く考えるにあたってのヒントになればと、術式決定までは少なくとも2回、診察を行うようにしています。特に初診では30分以上かけて希望を伺い、できるだけたくさんの質問にお答えしています。術式を選択するにあたっては、がんの治療方針のみならず、体型やライフスタイルにも左右されます。患者さん個々の事情に合わせておすすめできる術式をご紹介し、納得度を高めてから乳房再建を決断いただくことを重視しています。
進行がんや放射線治療済みの患者さんでも再建をあきらめないで
愛知がんセンターでは、乳腺外科との連携のもと乳房再建に関するDVDを制作しました。DVDでは、乳房再建についての概要や実際の症例写真、合併症のリスクなどを詳しく解説し、乳房切除を予定している患者さんには必ず見ていただくようにしています。こうした取り組みもあり、形成外科を受診される時点では、おおよそ乳房再建の概要はご理解いただいているので、再建を希望する患者さんとはスムーズにお話を進めることができます。
時々、進行がんの患者さんや放射線治療を受けられた患者さんが、「再建しなくてもいい」とおっしゃることがあります。もちろん乳房再建術が、乳がん治療を邪魔するようなことがあってはいけませんが、乳がん治療と並行して再建を検討するなど、ぜひ乳がん治療の初期の段階から形成外科医に相談していただきたいと思います。
合併症の起こりにくい安全な術式を選択
乳房再建は、「生きていく」ことだけを考えると、必須の手術ではありません。でも、QOLの向上という観点では、乳房が無いことを引け目に感じたり、乳房が無いという事実を隠そうとしている患者さんには、そのストレスから解放されてほしいと願います。
乳房再建には、整容性という大事な要素もありますが、私が医師として何より大切にしていることは、「合併症を減らしたい」ということ。乳房再建術では年々術式が進化しており、時代の流れに沿ってそれらを取り入れることももちろん大切です。でもまずは合併症が起こりにくい術式を選択するようことを最優先に心がけています。術式の進化や安全性の向上とともに、今後は多様な価値観やニーズに対応できるよう、ますます腕を磨いていきたいですね。
(2021年10月 オンライン取材)
名称 | 愛知県がんセンター病院 | ||
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所在地 | 464-8681名古屋市千草区鹿子殿1番1号 | ||
診察時間 | 8時30分~11時30分(初診)※2021年10月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。 | ||
休診日 | 土・日・祝日、年末年始 | ||
TEL | 052-762-6111(代) | ||
URL | https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/index.html |