• 公開日2012.12.14
  • 最終更新日 2024.01.17

「再建手術で得た胸が可愛くてしかたありません」

東京都 M.Sさん(50歳)

手術方式:「一次一期再建」(乳がん手術と同時にインプラントで再建)
 ・乳がん手術:  2011年1月
・乳房再建手術: 同上 (両側の乳腺全摘術と同時にインプラントによる再建)
執刀・乳がん手術、乳房再建手術とも ナグモクリニック 南雲吉則医師
術前治療:術前抗がん剤治療(タキソテールとFECを約半年間投与)
術後治療:ホルモン療法(ノルバデックス)

現実を直視する怖さで検診を避け続け

最初に右胸のしこりを感じたのはもう30年以上も前、高校3年生のときでした。「胸をなくすくらいなら死んだほうがまし」とまで思いつめ、母親にも隠していましたが、だんだん大きくなってきたため近くの病院を受診。そのときは悪性ではないと診断され、切除もありませんでした。

それから10数年が経って、しこりがピンポン玉くらいにまで大きくなり痛みを感じるようになって再び病院へ。右乳首の外側に2カ所の乳腺繊維腫があるいうことで、32歳のときに摘出手術を受けました。

その後も毎年検診は続けるように言われながら、仕事にかまけてほとんど放置状態。高校生のときの初めての診察で、若い男の先生に胸を触られる恥ずかしさや嫌悪感がトラウマになっていたということもありました。でも、あるとき受けた検診で両胸に14個ほどのがんが見つかり、大学病院でのMRI検査で右が浸潤、左が非浸潤の多発性乳がんとの診断。48歳のときでした。

再建手術にも選択肢があることを多くの人に教えられ

主治医からは、手術は両胸の全切除になることと、形成外科との連携で再建もできることを聞かされました。再建でどんな胸になるのかが知りたくて、患者さんの写真を見せてほしいと頼むとやんわり断られてしまい、そういうことをお尋ねすることの難しさも実感しました。

ちょうどそのころ、病院に乳腺専門外来が創設され、乳がん治療の権威の先生が招聘されたのを機に、その先生からの“院内セカンドオピニオン”を得られないかと申し出てみました。主治医はあまりいい顔をされませんでしたが、最終的にその先生のご意見を伺い、それに従う形で術前化学療法に入りました。

再建手術のことも同じ先生にお任せするつもりで、エキスパンダーまで入れていただくことで手術日も決定。ただ化学療法を受ける6カ月の間に患者会などに参加し、乳房再建の経験者にたくさんお目にかかり、その中の方が書かれた本や、写真集『いのちの乳房』などを見るうちに、自分に合った術式について一から考え直してみたいと思うようになりました。

自分にいちばん合った術式は何か…

両胸を失う喪失感、数カ月後に再度手術を受けることの精神的・経済的な負担、エキスパンダーを入れた状態で仕事を続けること…色々な観点から熟考し、相談もして、最終的に選んだのがインプラントによる一次再建でした。わがままは承知の上でのお願いでしたが、主治医も快く南雲先生への紹介状を書いてくださいました。

乳がん切除ではリンパ節の郭清も行いましたが、すぐに家事などで手を動かすようにというアドバイスを守り、手術後の後遺症もなく毎日を快適に過ごしています。時間がたつほどに胸のある喜びがじわじわとわき上がってきて、いまは自分の胸が可愛くてしかたありません。

40~50代は、自分の体に負担をかけて仕事をしている人が少なくありません。私もずっと仕事を生き甲斐のように思ってきましたが、手術後はフルタイムワークをやめ、食生活にも気を付けるようになりました。気持ちがすれ違いがちだった夫とも向き合う時間が増えました。病気になってみて、自分をもっと大切にしなくてはいけなかったことを痛感するようでは遅いのですが、でもこれからは自分のために、そしてこれから手術を受ける方たちのために、意義のある時間の使い方をしたいと思っています。

*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。

(取材:2012年8月)

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