• 公開日2022.11.01
  • 最終更新日 2023.05.16

乳房再建医の声

患者さんにはできるだけ喪失感を感じない手術を受けてもらいたい

赤澤 聡(あかざわ さとし)先生
国立がん研究センター中央病院 形成外科長

術式:
インプラント、自家組織(広背筋皮弁、腹部穿通枝皮弁)
※腹部穿通枝皮弁(DIEP)による一次一期再建が多い
標準手術時間:
エキスパンダー 1時間、インプラント入れ替え 1時間
広背筋皮弁 一次一期 4~6時間、二期および二次 3〜4時間
腹部穿通枝皮弁 一次一期 4~6時間、二期および二次も同じく4~6時間
入院日数:
エキスパンダー、インプラント入れ替え 1週間
広背筋皮弁 術後10日~2週間、腹部穿通枝皮弁 術後1週間~10日
乳頭乳輪の再建時期:
乳頭:半年後以降、乳輪:乳頭再建から半年以降、タトゥーが多い

乳房再建を通して安心してがん治療を受けてもらえるように

形成外科医として基本的にはずっとがんセンターで診療してきているので、がん切除後の再建には昔から携わっていましたが、乳房再建を始めたきっかけは前任地である静岡県立がんセンターで武石明精先生に師事したことです。その後、国立がん研究センター中央病院に移り、乳房再建にも積極的に取り組んでいます。

がん診療においては、再建手術を通して患者さんに安心してがん治療を受けていただけるということが一番だと思っており、我々の役割もそこにあると思っています。乳がんは女性性の象徴である乳房を失うということで、患者さんの不安も強いと思いますが、術後に乳房があることで、患者さんがとても喜んでくださっているのを見ると、乳房再建手術をする側としてもやりがいを感じます。

術式選びはシンプルに。トラブルなく安全な手術できれいな乳房を作る

手術については、できるだけトラブルなくきれいな乳房が出来ることが一番だと思っていますので、患者さんの負担が少ないように安全な手術を心掛けています。

術式は人工物のインプラント、自家組織の場合は広背筋皮弁、腹部穿通枝皮弁(以下DIEP)の3つの中から患者さんに選択してもらっています。大腿などの皮弁からの再建は行っていません。選択肢を増やしても患者さんが逆に迷われるのではないかと思うからです。

当院では、できる限り喪失感を感じない手術を受けてもらいたいという思いから、一次一期再建を積極的に行っています。特にDIEPは、乳房再建MT計量法システムの採用により手術時間が短く、切除と合わせて平均手術時間は5時間です。

現在は乳頭乳輪温存乳房全切除術(NSM)、皮膚温存乳房全切除術(SSM)が中心で元の皮膚が活かせるので、形もきれいに作りやすいです。結果として身体的・精神的なダメージが少なく、整容性の面からもメリットが多いので、一次一期再建を希望する患者さんにはできる限り積極的に対応していきたいと考えています。

インプラントの場合は一次一期再建(ダイレクトインプラント)は行っていません。NSMの場合でもエキスパンダーでしっかりと皮膚を伸ばしてから一次二期で行っています。

翌日離床は早期回復につながる

術後は特に問題がなければ、翌日に離床してもらっています。早期離床は早期回復につながりますし、結果にも影響がないので寝てもらっている必要はありません。患者さんにとっても手術翌日の離床は硬膜外麻酔が効いていてお腹も痛くないので、硬膜外を外してから歩き始めるよりも楽ではないかなと思っています。2日目には皆さんどんどん動いていて、病室に行くといないこともありますよ。合併症である血栓の予防を考える上でも結果に影響しないのであれば動いてもらうようにしています。

術式の選択は医師とよく話し合うことが大切

乳がんの手術を最初に受けるときに、私としては患者さんが乳房を失う喪失感を感じないで済むことが理想だと思っているので、できれば一次再建ができる施設を考慮に入れて、いろんな医師の話を聞いてもらうのがいいと思っています。その時点で決められず、悩んでいる場合は二次再建も検討することになると思いますが、その場合でもよく考えていろんな医師の話を聞いていただきたいです。医師との相性もありますね。よく話をして納得して再建手術を受けていただきたいと思っています。

私の場合、外来診療の初回は再建の概要説明と診察で15分から20分。その後改めて再建の方法が決まったら、詳細についての説明をします。DIEPの場合は細かい話を20分くらいかけて行います。その次に会うのは入院したときですので、不安や心配事がある場合は、入院の時でも良いですし、その前に予約を取ってもらって質問してもらっても構いません。質問の内容によっては乳腺外科の看護師も対応します。

より侵襲性の低い術式の可能性を探る

現在、乳房再建の術式はインプラントまたは自家組織の皮弁移植になります。今後、脂肪注入が保険適用になれば、再建の方法が増えるのではないかという印象は持っています。そういうものもうまく取り入れながらやっていきたいと考えています。皮弁移植はやはり乳房の形を作るために別のところに大きな傷を作る手術なので、ほかに出来る方法があればと思っていますが、脂肪注入だけでは作り切れないれないところもあると思うので、何か工夫ができないかを考えていければと思っています。

(オンライン取材:2022年10月)

 

名称 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院
所在地 〒104-0045東京都中央区築地5-1-1
診察時間 金曜日 ※2022年10月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。
休診日 土曜日・日曜日・祝日・年末年始
TEL 03-3542-2511(代表)
URL https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/plastic_surgery/010/index.html

このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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