• 公開日2022.11.11
  • 最終更新日 2024.01.17

乳房再建手術経験者の声

術式選択は再建後のボディイメージが決め手に。理想通りの自然な下垂ができました

東京都 T.Rさん(50代)

手術方式:一次二期再建
・乳がん手術
2018年11月 左乳房全摘と同時にエキスパンダー挿入
執刀 国立がん研究センター中央病院 神保健二郎先生
エキスパンダー挿入 国立がん研究センター中央病院 赤澤聡先生

・乳房再建手術
2020年6月 腹部穿通枝皮弁による自家組織再建
2021年4月 修正手術および乳頭再建(健側からの乳頭移植)
2022年1月 乳輪再建(タトゥー)
執刀 国立がん研究センター中央病院 赤澤聡先生

術前治療:なし
術後治療:抗がん剤、分子標的薬、ホルモン療法(タモキシフェン2年、アロマターゼ阻害薬5年継続中)

 

乳房再建という選択肢が乳がん治療の支えに

53歳のとき、何気なく触った左胸にしこりを発見。地元のクリニックで検査を受けたところ乳がんであることがわかりました。母も母の姉も70代で乳がんを経験していたので、いつかは自分もなるかもしれないと思い毎年検査していましたが、まさか50代で乳がんになるとは思っておらずとても驚きました。

地元のクリニックから紹介状をもらい、いくつかの病院を検討。「がん」に関わることであればすべて対応可能で症例数も多いがん専門病院がよいと思い、通院時間はかかりましたが、国立がん研究センター中央病院を選びました。

10月中旬の初診から連日の検査の結果、11月末に手術の予定が組まれました。その当時は乳がんに関する知識もほとんどなく、じっくりと考える時間がない中、初診の日に乳房再建という選択肢があることを知ることができたことは幸いでした。手渡された冊子の中の「乳がんで悲しむ人をなくすために」という言葉に目が留まり、手術をしても全摘のままではない、元の状態に近づける方法があるという事実は心の支えになりました。実際、抗がん剤治療中は、脱毛して心が折れそうなときも、エキスパンダーによる胸のふくらみがあったことで何度も励まされました。


まさかのインプラントリコール。再建の予定が白紙に

最初は身体の別のところに傷が増えるのが嫌だったことや、自家組織再建はとても難しく時間もかかる手術で怖いという思い込みがあり、インプラントによる再建を希望しました。しかし、エキスパンダーを入れていた期間に唯一の保険適用のインプラントがリコールになって使えなくなったことで、「この先どうやって再建を完成させるのか」を自分事として考えなければならい状況に直面しました。

先の見えない不安の中、セミナーに参加したり、他の病院に通う再建途中の方々と情報交換したりして、あらゆる可能性について検討。最後は主治医と何度か話し合い、自分の下垂した胸の形を再現するには腹部からの自家組織再建が向いているということに納得して方針を切り替え、腹部穿通枝皮弁による再建手術をお願いすることにしました。


術後は痛みもなく翌日には離床

腹部から血管ごと皮弁を切り取り胸に移植する手術ということで、術後の痛みや回復のことなど心配もありましたが、一度全身麻酔で乳房全摘手術を受けていたので、再建手術の時は比較的落ち着いて手術に臨めたと思います。

手術は順調に終わり、翌日の朝食後には立つ練習をしました。事前に「翌日には離床できますよ」と聞いていましたが、本当に翌日は痛みもなく歩けたので、なんだか拍子抜けしてしまいました。病棟の先生が「みなさんとても大変な手術だと思って覚悟されてきますが、意外と大丈夫だったでしょう?」と笑っていたのを覚えています。


時間をかけて自然な乳房に近づいていくことの喜び

その後、1年かけて再建した胸の形状は健側に近づいていきました。特にうれしかったのは、左右のバージスライン(ブラジャーのワイヤー部分)がピタッと揃い、自然な下垂が作られていたことです。それだけでも十分満足だったのですが、乳頭再建を行う時に、ドッグイヤーと言われる腹部の傷の端にできる突起の修正と、再建した胸の脇の部分の少し大きめに膨らんだ部分から脂肪吸引し、採った脂肪をデコルテの窪んだ部分に注入して修正する手術を受けました。さらに半年後、乳輪をタトゥーで再建し、エキスパンダー挿入から約3年かけて、私の乳房再建は完成しました。


乳房再建した胸をみて娘たちも安心してくれた

もともと旅行が趣味で、乳がんになってからも温泉に行くことはありましたが、人目につかないように隠しながら入浴する不便がありました。娘たちも私の乳がんがわかってからは、遠慮しているのか一緒にお風呂に入らなくなっていました。心と体が変化する思春期の彼女たちを母としてサポートしてあげたい。そう思う一方で、治療中はお互いが遠慮がちになってしまい、もどかしいと感じた時期でもあったと今では思います。

乳房再建が終わったとき、家族に温泉旅行を提案し、4年ぶりに娘たちと大浴場に行きました。娘たちの反応が気になりましたが、きれいに再建された胸を見てとても安心したようでした。それからは外見に関する余計な気兼ねもなくなり、普段の生活でも心理的な距離がまた近くなったように感じています。


気持ちは変わるもの。時間とともに新しい自分を受け入れる

乳房再建手術は「乳がん手術」をなかったものにする魔法の手術ではないので、よく見れば傷や凹みなどもあります。今ではそれは「自分が乳がん治療を頑張った証」と思えるようになりました。再建が完成をするまでの3年の間に気持ちや考え方も変わり、前向きに受け入れられるようになったのだと思います。

これから乳房再建を考える方には、主治医の先生と術後のボディイメージについてよくすり合わせをすることをお勧めします。技術的にここまではできるけれど、これはできない、という部分を理解したうえで、自分の希望をきちんと伝えれば、満足度の高い乳房再建ができるのではないでしょうか。

*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。

(E-BeC×アラガン・ジャパン共催「~なる前に考えておきたい~乳がんになった日からの選択展」のインタビューを再編集:2022年11月)

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このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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