• 公開日2023.12.13
  • 最終更新日 2024.01.17

乳房再建手術経験者の声

アラガン・クライシス後にコロナ禍。不安を取り除いてくれた主治医に感謝

東京都K.Rさん(51歳)

東京都K.Rさん

手術方式:一次二期再建

2019年2月 乳がん手術(右側全摘)+エキスパンダー挿入
執刀 聖路加国際病院 乳腺外科 竹井淳子先生

・乳房再建手術
2020年5月 腹部穿通枝皮弁自家組織再建

執刀 がん・感染症センター東京都立駒込病院 寺尾保信先生

・乳頭乳輪再建手術
2020年8月9日 乳頭再建(皮弁立ち上げ)
2020年8月14日 乳輪 タトゥー
執刀 がん・感染症センター東京都立駒込病院 寺尾保信先生

術前治療:なし
術後治療:タモキシフェン10年


乳がん手術と同時にエキスパンダー挿入後、アラガン・クライシスに

2018年11月、当時勤めていた会社の検診で再検査となり、翌12月に乳がんと診断されました。検診の段階で、先生や検査技師の方が検査している様子を見て「ああ、これは何かあるな」ということは分かりました。

治療を受ける病院は自分で決めていいと言われましたが、私はがんの告知を受け、それを受け止めるだけで精一杯。立ち上がることもできない状態でした。そんなとき、友人が「ここで治療を受けたお友だちがいるよ」「ここもあるよ」と、病院の情報を教えてくれました。その中の一つに、乳房再建ができる聖路加国際病院がありました。

「乳房再建をして明るくなれたらいいな」と思い、聖路加国際病院を選びました。病院に決めるまでに、サードオピニオンまで受けたと思います。

2019年2月、右乳房全摘手術をし、同時にエキスパンダーを挿入しました。それから数か月後、エキスパンダーの入れ替え手術の日程を決めるため受診した際に、主治医からアラガン・クライシス(*)について聞かされました。

*アラガン・クライシス: 2019年7月、アラガン社があつかうテクスチャードタイプの乳房再建用エキスパンダーとシリコンインプラントが「ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)」発症のリスクがあるということで自主回収となり使用できなくなりました。

エキスパンダーは取り出さなくてはいけない。しかし、取り出したところで入れるものはない。伸ばしてしまった皮膚はどうしたらいいのか……。乳がんを罹患し心底悩み、どうにかここまできたのにまたどん底に突き落とされたような気持ちでした。

アラガン・クライシス後、たとえ違う種類のインプラントを選んだとしても、またBIA-ALCLになる可能性があると考えるようになってしまいました。だからといって、自家組織を選び、新しいキズを作るのも怖い。自問自答の日々でした。この時、とにかくいろいろな人の話を聞こうと思い、E-BeCをはじめさまざまなセミナーに足を運び、医師や経験者の方に話を聞きました。

乳がん手術の際は、まな板の鯉のように「全部お任せします」という気持ちだったのですが、再建の際にようやく自分の体について考えるようになれたのだと思います。

あるセミナーで、再建手術をお願いすることになる主治医と出会いました。お話を聞いて安心できるなと思ったことと、病院が家から通いやすい場所にあったこともあり、決めました。

 

納得がいくまで説明を聞き、手術方法を決めた

私は患者としては〝劣等生〟だったと思います。手術の説明を聞くのに、先生に会いに何度足を運んだかわかりません。先生も「一回の説明で決めなくていいです」とおっしゃってくださって、私が納得のいくまで説明をしてくださいました。

とにかく患部以外のところにキズをつけるのが怖いという気持ちを伝えたら「大丈夫です」と強く言ってくださいました。また、私は健側にもがんを患う可能性があり「もしそうなった場合に腹部を切ってしまったらドナーがなくなってしまう」と不安を打ち明けると「まだがんになってもいないのに悩むのはおかしいし、もしもがんになったとしても、また違う場所を使ってきれいに再建してあげるから」と励ましてくださいました。そこでようやく「腹部でお願いします」と先生にお伝えすることができました。

手術の決意を固めた2020年4月、1回目の緊急事態宣言が出されました。5月に再建手術をすると決めていたものの直前まで術前の検査ができず、また不安になってしまいました。

コロナ禍で子どものことも心配になり、主治医に「このまま、エキスパンダーを入れておいたほうがいいでしょうか」と不安を口にすると、電話口で「あなたの手術の準備はできています。あとは気持ち一つですよ」とおっしゃって、ここで決意が固まり2020年5月、腹部穿通枝皮弁術で再建手術をしました。

いま振り返ると、主治医は私の不安を上手に取り除いてくださったと思います。私は、主治医にお願いできてほんとうによかったです。

 

失ったものは貪欲に取り戻してほしい

私は乳がんになったとき「一生がんがつきまとい、病人として生きていくんだな」と思い、そのときに勤めていた会社を辞め、乳がんになったことで多くのものを失いました。乳がんにならないにこしたことはないと思いますが、罹患して5年たったいま、失ったもの以上に得たものがあったと感じています。乳がんになったことでそれまで狭かった自分の視野が広くなり、人生の彩りが豊かになったと思えるようになりました。

先日、E-BeCのセミナーで再建経験者として自分の経験を話しました。乳がんになったとき経験者のお話を聞かせてもらっていた自分が、まさかこのようなバトンを受け取るとは思ってもいませんでした。私が5年前に参加したE-BeCのセミナーで勇気をいただいたように、参加者の皆さんを励ますことができたらと思っています。

再建を検討している皆さんにお伝えしたいのは、この言葉が適切かどうかわからないのですが「失ったものは貪欲に取り戻してほしい」ということです。その先の人生が明るくなるのであれば、周囲になにを言われようがぜひ失ったものを取り戻してください。

*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。

(オンライン取材:2023年11月)

このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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