• 公開日2013.07.10
  • 最終更新日 2014.01.24

形成外科医に聴く

インプラント保険適用の承認について

形成外科医に聴く

信頼出来る情報を収集して、体制の整った医療機関で
熱意ある医師のもとで手術を受けることが重要です

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会理事
医療法人社団ブレストサージャリークリニック院長 岩平佳子 

乳房再建専用のエキスパンダーも保険適用の対象になりました

今回、シリコンインプラントと一緒に、“乳房専用”のティッシュエキスパンダーが保険適用の対象となったことはたいへん喜ばしいことです。  

これまで20年以上も一般に使われてきたティッシュエキスパンダー(写真上)は、本来は痣(あざ)などを除去した部分を覆うのに、隣接するきれいな皮膚を引き伸ばすための器具で、乳房再建のために開発されたものではありません。これは表面がつるつるして体内で滑りやすく、生理食塩水の注入口の接合部が外れやすいなどさまざまな問題がありました。 

 

2013年7月から保険適用対象となったティッシュエキスパンダー(写真下)は、乳房再建専用につくられたもので、種類も多くほとんどの胸に合う理想的なエキスパンダーです。アメリカで1995年に開発されていましたが、保険が使えなかったため患者さんたちは個人輸入の形で入手するしかなく、今回の保険適用は乳房再建を望む患者さんたちには大きな朗報となりました。(写真提供:医療法人社団ブレストサージャリークリニック) 

大切なのは自分の胸にいちばん合ったインプラントを選ぶこと

シリコンインプラントの保険適用については、まず2013年7月1日にラウンド型のものが2種類、続いて2014年1月8日にアナトミカル型のインプラントについても適用が開始されました。  

アナトミカル型のインプラントは、下部に自然な厚みのある”しずく型”をしています。だからといって、これを使いさえすれば誰でもきれいな乳房が再建できるというわけではないことに注意していただきたいと思います。このタイプだけで200以上もの種類があり、その中から形成外科医が患者さん一人ひとりに合ったものを選ぶことが最も重要な前提です。 

また胸の形や大きさ、乳がん摘出手術の状況などによっては、アナトミカル型ではなくラウンド型を使うほうがきれいに再建できる場合もあります。インプラントの保険適用が始まったことを受け、さまざまなメディアが色々な情報を流していますが、情報に惑わされず、主治医ともきちんと話をして、ご自分に最も合ったインプラントを選ぶようにしてください。 

認定医療機関制度では執刀医の経験や実績も審査対象に! 

今回の保険適用と同時に、乳房再建手術を手がけることのできる医療機関に対する認定制度がスタートしました。日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が認定する医療機関の数もどんどん増えており、そのこと自体は乳房再建を希望する患者さんにとっても喜ばしいことです。しかし現行制度は、医師がどのくらいの技術と経験を持っているかまでを認定評価するものではありません。

乳房再建は決して簡単な手術ではありません。安易な手術を行ったために数年後に胸が大きく変形する危険性もあります。認定にあたっては、担当医がどれだけ再建手術に経験と実績を持っているかまでを審査すべきだと思います。少なくともこれから初めて乳房再建を手がける医師には、実績のある乳腺外科医や形成外科医のもとで、実際の手術を見て学ぶ機会を少しでも多く持っていただきたいと願います。

また私は、ティッシュエキスパンダーの挿入は乳腺外科医にもっと担当していってもらいたいと考えています。乳がん切除後、再建手術を待つ間にも乳房の皮膚はどんどん縮んでいくからです。乳房切除後の周辺組織がエキスパンダーによってどんな影響を受けるかを乳腺外科医が熟知することは、よりよい乳房再建手術の実現にもつながっていくはずです。乳房専用のエキスパンダーが保険適用となったのを機に、これが乳腺外科医のルーチンとなり、乳腺外科医と形成外科医のチーム医療体制による乳房再建手術が確立していけばさらに理想的ですね。  

認定医療機関は専門外来を設けて個々の患者さんに対応を

乳房再建手術は、患者さん一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、時間をかけて手がけていくものです。再建の途中に乳がんが再発してしまった場合でも、患者さんたちは「きれいな胸を作るまで、どんな治療も頑張って乗り越えます」とおっしゃいます。私たち医師には、一人ひとりのそうした思いを受け止め、応えていく義務があります。 

そのためにも医療者側は、患者さんと十分なカウンセリングを重ね、感染症や喫煙者に多い血行障害による壊死などのリスクについてもきちんと説明し、相互に納得したうえで手術を進めていかねばなりません。今回の認定医療機関制度はそこまでを求めるものではありませんが、これから乳房再建手術を手がける医療機関には、できれば専門外来を設置し、十分な人手と時間を投じて一人ひとりの患者さんと向き合っていく体制を整えていただきたいものです。

また、ここ2~3年のうちには各認定医療機関に対する評価も定まっていくことでしょうから、これから保険による乳房再建を考える患者さんたちは、信頼できる情報を収集し、熱意と実績のある医師のもとで手術を受けるようにしていただきたいと思います。
(取材:2014年1月15日)

 

このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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