《第3章》 シリコンインプラントを使う「乳房再建手術」

「乳房再建手術」に使うシリコンインプラントは
どのようなものですか

「乳房再建手術」に用いるシリコンインプラントにはさまざまな種類があります。主治医と相談しながら、ご自分にもっとも適したタイプを選択しましょう。

1 シリコンインプラントの種類

現在、乳がんによる乳房再建手術において健康保険が適用されるのは、次の3種類のシリコンインプラントです。いずれも手術後にマンモグラフィ検査が受けられます。

アナトミカル型のテクスチャードタイプ(写真1)
形状 下方に厚みのあるしずく型アナトミカル型のテクスチャードタイプのシリコンインプラント
表面加工 表面に凹凸加工が施されたタイプ。インプラントの周囲に薄い膜ができる“被膜拘縮”という免疫反応を起こしにくい
内容物 粘度が高く、外に漏れ出しにくいシリコンジェル
ラウンド型のテクスチャードタイプ(写真2)
形状 まるいおわん型ラウンド型のテクスチャードタイプのシリコンインプラント
表面加工 表面に凹凸加工が施されたタイプ。“被膜拘縮”を起こしにくい
内容物 アナトミカル型よりやわらかめのシリコンジェル
ラウンド型のスムーズタイプ(写真3)
形状 まるいおわん型ラウンド型のスムーズタイプのシリコンインプラント
表面加工 表面がつるつるしたタイプ。凹凸加工のタイプに比べて“被膜拘縮”を起こしやすい
内容物 アナトミカル型よりやわらかめのシリコンジェル

2 ティッシュ・エキスパンダー

インプラントを入れる前に、ティッシュ・エキスパンダー(組織拡張器)を大胸筋の下に挿入して、胸の皮膚と筋肉を伸ばすことが一般的です。

挿入後、およそ半年をかけて、注入口から生理食塩水を足してエキスパンダーを徐々に膨らませ、皮膚と筋肉が十分に伸びたところでインプラントに入れ替えて再建手術を完成させます(患者さんの希望や状況によって、エキスパンダー挿入後に自家組織による手術を選ぶこともできます)。

健康保険が適用されるのは写真の2種類のティッシュ・エキスパンダーです。写真4のアナトミカル型のものが「乳房再建手術」専用のものです。

「乳房再建手術」専用ティッシュ・エキスパンダーティッシュ・エキスパンダー

※写真提供:1~4アラガン・ジャパン株式会社、5株式会社高研

シリコンインプラントによる「乳房再建手術」は
どのように行いますか

シリコンインプラントを使う「乳房再建手術」には、主に次のような種類があります。先にティッシュ・エキスパンダーを使って皮膚や筋肉を伸ばす方法が一般的です。

1 ティッシュ・エキスパンダーを使う方法

現在もっとも一般的に行われているのは次の2つの方法です。いずれもエキスパンダーを入れるタイミングが違うだけで、方法は同じです。

ティッシュ・エキスパンダー

1乳がん手術と同時にエキスパンダーを入れ、後にインプラントに入れ替えて再建する方法(一次二期再建):乳がん切除時にティッシュ・エキスパンダーを大胸筋の下に挿入し、およそ半年をかけて皮膚と筋肉を伸ばした後、同じ傷あとからインプラントに入れ替えて乳房再建を完成させます。

2乳がん手術後に一定期間をおいてエキスパンダーを入れ、後にインプラントに入れ替えて再建する方法(二次二期再建):乳がん手術を終えてから時間が経っている場合は、乳がん手術の傷あとを切開してティッシュ・エキスパンダーを挿入し、皮膚と筋肉を伸ばした後、インプラントに入れ替え乳房再建を完成させます。

2 ティッシュ・エキスパンダーを使わない方法

1乳がん手術と同時にインプラントを入れる方法(一次一期再建):乳がんの切除と同時にインプラントを挿入して乳房再建を完了する方法。

2乳がん手術後に一定期間をおき、エキスパンダーを使わずにインプラントで再建する方法(二次一期再建):乳房のボリュームが比較的小さい方に限られる方法です。

※ただし、いずれもあまり一般的な方法ではありません。

岩平佳子 医師《専門医のコメント》

きれいな乳房再建は
その方に適合したインプラントを選ぶことから

医療法人社団ブレストサージャリークリニック院長
岩平佳子 医師

2013年7月に一部のティッシュ・エキスパンダーとシリコンインプラントが健康保険の適用対象となりました。なかでも2014年1月に保険適用となったアナトミカル型(しずく型)のインプラントは、内容物の粘度が高くより安全性に優れたタイプのもので、手術を希望される方にも朗報となりました。

ただアナトミカル型のインプラントについては、これを使えばきれいに再建できるという誤解が多いのですが、重要なのは200種類以上もあるなかから、その人に合ったインプラントをきちんと選択することです。逆に、乳房の形や大きさによってはラウンド型のインプラントのほうが向いている方もいらっしゃいます。インプラントによる「乳房再建手術」を希望される方は、こうした観点からきちんと診察と説明に時間を割いてくれる形成外科医のもとで、納得のいく「乳房再建手術」を受けるようにしてください。

手術を受ける前に知っておきたいこと。
手術・入院期間と費用

1 手術を受ける前に知っておきたいこと

シリコンインプラントを使う「乳房再建手術」は手術・入院の期間が短く、自家組織を使う手術より時間的・経済的・身体的な負担が小さいという良さがありますが、人工物を使うことによるさまざまな留意点があります。

◎合併症のリスク

  • 人工物を体内に入れることで感染症を招くことがあります。感染症は、手術から長期間を経ていても起きることがあり、その場合はインプラントを取り出して再建手術をやり直すことになります。
  • 異物に対する免疫反応として、インプラントの周囲に薄い膜が生じ、硬く締まって痛む“被膜拘縮(ひまくこうしゅく)”という合併症が起きることがあり、日常のケアが必要です(テクスチャードタイプのインプラントでは起こりにくいとされます)。
  • 乳がんの治療で放射線照射を受けた人は、血流が悪くなり種々の合併症を起こしやすい傾向があります。

◎将来的な入れ替え

  • インプラントには永久的な耐用性は保証されておらず、さまざまな理由で破損することもあります。現在使用されるインプラントはいずれも安全性の高いものではありますが、10〜20年後の入れ替えを視野に入れておくことが望ましいとされています(入れ替えの際に、自家組織での再建に切り替えることもできます)。
  • 加齢に伴う乳房の下垂がないので、将来的に左右バランスをそろえる手術が必要になることもあります。

◎手術後のケア

  • “被膜拘縮”を防ぐため、特にスムーズタイプのインプラントを使う場合は医師の指導によるマッサージが必要です。
  • 手術の直後はインプラントの位置がずれないよう、専用のブラジャーの使用を勧める医療施設もあります。

2 手術・入院期間と費用

ティッシュ・エキスパンダーとシリコンインプラントを使う場合の手術・入院期間および費用の目安は次の通りです。

ティッシュ・エキスパンダー シリコンインプラント
手術時間 30分〜1時間 30分〜2時間程度
入院期間 日帰り〜1週間程度 日帰り〜1週間程度
入院・手術費用 10万〜20万円 30万円程度

※シリコンインプラントを使う「乳房再建手術」には長らく健康保険が適用されませんでしたが、2013年に厚生労働省は「乳房再建手術」での使用を条件に一部のティッシュ・エキスパンダーとシリコンインプラントの保険適用を認可しました。上記は、すべて保険適用対象のエキスパンダーとインプラントを使用した場合の入院・手術費用の自己負担額(3割負担)の目安です。

※高額医療費の払戻し制度の適用を申請すると、実質的な負担額は9万〜14万円程度となります(所得や年齢、入院期間により異なります)。自己負担限度額の計算方法は全国健康保険協会のウェブサイトをご参照ください。

※保険適用のティッシュ・エキスパンダーとシリコンインプラントによる「乳房再建手術」は、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が実施施設として認定した医療施設でのみ行えます。認定施設一覧は、同学会のウェブサイトに公開されています。

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