乳房再建手術最前線リスト
乳房再建手術経験者の声

「60歳での決心。乳房再建に年齢は関係ありません」

北海道 USさん(71歳)

 

手術方式:「二次一期再建」(腹直筋皮弁 乳がん手術から時間をおいて再建)
 ・乳がん手術 : 1970年4月 左乳房 全摘手術
   手術・釧路労災病院   
 ・乳房再建手術 :2001年5月 腹直筋皮弁による再建(同時に右乳房の縮小手術)
   執刀・蘇春堂形成外科 野平久仁彦医師   
 ・乳頭乳輪の再建 :2001年8月 脇腹の皮膚を移植して再建。乳頭はタトゥーで着色
術前治療 : 無治療
術後治療 : コバルト照射6カ月(90回)

45年前に乳がんを手術。妊娠9カ月の身体でした 

乳がんの手術をしたのはもう45年も前のことです。NHKの「きょうの健康」という番組で紹介していた自己触診を試したところ左乳房にしこりを感じ、すぐに近くの総合病院を受診。当時は粉ミルク礼賛時代で、長男の授乳を断っていたときに起こした乳腺症の影響でしょうとの診断でした。「2人目ができれば乳腺もほぐれてきますよ」といわれ、やがて次男を妊娠しましたが、しこりがなくなる気配はありません。   

再度診察を受けても「異常なし」。医師には「細胞診もできるが、妊娠8カ月では出血が止まらず、早産を起こすおそれがある」と拒絶され、納得できぬまま近所の方の勧めで受診した釧路労災病院で、ようやく検査を受けることができました。万一陣痛が始まるようなことがあっても大丈夫なように、日赤病院との連携体勢まで整えていただいたうえでの検査でした。 

果たして、2週間後に届いた結果は「悪性」。「出産後では命の保証はできないので、いますぐ手術をしましょう」と、妊娠9カ月の身体で手術に臨んだのが1970年の5月8日。同じ月の25日に次男を出産するというめまぐるしさでした。 

辛い治療の日々でしたが、子どもたちのために頑張ってきました 

でも本当に大変なのはそれからでした。当時の乳がん手術は、乳腺からリンパ節、大胸筋までを切除する“ハルステッド法”が主流で、子どもを抱っこしようにも腕が上がりません。出産30日目からは、半年間にわたるコバルト照射が始まり、不自由な身体で3歳の子と乳飲み子を連れての病院通いです。見るに見かねた近所の保育園の園長さんが長男を預かってくれましたが、90回の照射を終えるまでの日々は本当に長く辛いものでした。 

コバルト照射で食道まで焼け、食べ物を飲み込むにも苦労するありさま。長くは生きられないかもしれず、せめて母親の肌のぬくもりだけは伝えたいと懸命に食べ、懸命におっぱいを含ませる毎日でした。愚痴を聞いてもらう相手もなく、道を歩きながら涙を流したこともありましたが、同じ病気の患者さんたちにも励まされながら、あと半年頑張ろう、あと1年生きようと思っているうちに、気がつけば今日まで40年以上の歳月が流れていました。 

「健康面でも経済面でも、いまが再建には一番いい時期!」 

再建手術のことを知ったのは10年ほど前。乳がん検診のときに若い医師から「再建してみたら?」といわれたのがきっかけでした。60歳目前で再建ができるのかと思いましたが、医師は「とうにお子さんも手が離れ、健康面でも経済面でもいまが再建に一番いい時期」だとおっしゃいます。 

実のところ、子育ての間は乳房が片方なくったって・・・と思っていたものが、子どもたちが成人して心に余裕ができるようになると、肋骨が浮き出て半分死んだような左半身を見るのが辛く、友達や孫とも堂々と温泉に行けるようになりたいという思いも募ってきていました。健康診断で心電図を取るときにも気を使いますし、何よりやがて自分が亡くなったとき、湯灌をされるのに胸のない身体を触られると思うとたまらないのです。 

乳房がないことによる身体への影響もありました。脂肪も筋肉もない左半身はいつも冷え、右乳房の重みで身体も右側へ曲がり気味。ブラジャーやパッドがずれやすいので、ガーゼ袋にお米を入れた自家製パッドを使っていました。こんな辛さを思うと、再建を迷う理由などどこにもありません。  

長い間の心の傷と身体の傷を治していただき、本当の自分に戻れました 

再建手術は、蘇春堂形成外科の野平久仁彦先生にお願いしました。息子の嫁が看護師をしており、その紹介で受診した国立病院の先生が「私が執刀してもいいが、札幌に日本でも一ニという先生がいるから」とご紹介くださったのです。 

2001年の5月に腹直筋を使って再建。大きかった右側の乳房の縮小手術も同時に行い、左右のバランスをとっていただきました。麻酔から覚めたとき、左胸にまるで陽だまりにいるような温かさを感じたことをいまも忘れることができません。胆石や子宮筋腫、虫垂炎などの手術痕だらけのお腹ですが、手術前に「大丈夫、私がきれいに再建してあげますよ」とおっしゃったその言葉通り、看護師さんたちにも羨ましがられるほどきれいな胸を作ってくださいました。 

私の周囲にも乳がん経験者はたくさんいますが、再建を考える人はまだまだ少数派。でも私は、乳房再建手術のおかげで長い間の劣等感から解放され、いまでは自分が乳がんだったことも、再建したことさえも忘れているほどです。野平先生に長い間の心の傷と身体の傷の両方を治していただき、ようやく本当の自分の身体に戻ることができたとしみじみと感じています。

(取材:2013年9月)

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このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

最終更新日:2014.07.31.

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