• 公開日2020.10.30
  • 最終更新日 2024.01.17

乳房再建手術経験者の声

術後感染症を乗り越え、太もも自家組織で乳房再建。経験を伝えるため、ブロガーとして活躍中!

東京都 IYさん(40代)

手術方式:「一次二期再建」
(左乳房全摘し、同時にエキスパンダー挿入。3か月後にインプラントから予定変更し、右太もも自家組織で再建)

・乳がん手術
2018年6月 左乳房全摘手術
執刀 がん研有明病院 乳腺センター 森園英智医師
・乳房再建手術
2018年6月 エキスパンダー挿入 直後に感染症を発症し入院
2018年9月 右太もも自家組織で再建
執刀 がん研有明病院 形成外科 棚倉健太医師(当時)
・乳頭乳輪
2019年8月 乳頭:肋軟骨を芯にして皮弁の立ち上げ
乳輪:そけい部皮膚を移植
執刀 三井記念病院 形成外科 棚倉健太医師
術前治療:なし
術後治療:なし

転職決定直後の乳がん発覚。「絶対、負けない!」と強い思いで再建を決意

乳がんに気づいたのは、転職が決まった直後のこと。ある日、左胸にゴロゴロしたものを感じ、すぐに病院へ。検査の結果、乳がんと診断されました。3ヶ月後に新しい会社に移ることになっていたので「とにかく早く治療しなくちゃ」と焦りましたが、病院の先生からは「治療は何年にもわたるものだし、自分の命に関わることだから、焦らずじっくり考えて」と諭されました。病院のソーシャルワーカーさんや、がん相談支援センターにも相談しましたが、「手術時の病理検査を終えてから、転職するかどうかを決断したほうがいい」との意見で一致。結局、元の職場の厚意で、仕事を継続しつつ治療に必要な傷病休暇を取得させてもらえることになり、本当にありがたかったです。

その時40歳、独身。悲しいというよりも、仕事を失いたくない、ここで病に負けるわけにはいかない、と強く思いました。体力が一番!と、急に筋トレを始めて肋骨にヒビが入ったことも(笑)。乳がんに関する情報を集める中、乳房を再建できることも知り、さらに前向きな気持ちになったことも覚えています。

がん研有明病院を紹介され、乳がんの診断から約2ヶ月で手術を受けることになりました。私の場合は化学療法も放射線治療もなく、左乳房の全摘手術のみ。インプラントでの乳房再建を目指してエキスパンダーを入れましたが、患部からの排液が多かったためドレーンをつけた状態で退院し、その8日後にドレーンを外しました。

感染症を発症。インプラントの予定を変更し、太もも自家組織での再建

退院直後から、「早く体力をつけて、日常生活に戻ろう」という気持ちが高まり、毎日家の周りを歩いたりしていました。摘出した左乳房の傷口付近に赤みがあることに気付いてはいたのですが、もともとアトピー体質で皮膚が弱いので、その影響かな、と気にせず体を動かしていました。しかし、夏の汗ばむ時期だったことも災いしてか、患部の赤みは増すばかりで、ドレーンを外して数日後に38.5度の発熱。病院に電話で問い合わせると「感染症の疑いがある」と言われ、急遽、再入院することに。入れたばかりのエキスパンダーを外してしまうのか、そうであれば乳房再建はどうなってしまうのか、不安の日々でした。

ところが…です。

入院中に抗生剤を投与されているうちに、私は感染症を乗り越えてしまったようなのです。主治医にも「非常にレアなケース」と言われながら、結局はエキスパンダーをそのまま入れた状態で乳房再建を目指すことになり、この時は2週間ほどで退院しました。

3ヶ月後。乳房再建手術に際し、主治医からは感染症の再発リスクを抑えるため、インプラントの代わりに太もも自家組織での再建を提案されました。思ってもみなかった提案に驚きましたが、将来の妊娠の可能性を考え腹部を避けることができ、健側での再発リスクを考慮すると2回分組織を採取できることなどから、総合的に太ももが最良と判断されたそうです。

太ももでの再建を終えて1週間後、更なる試練が。ドナーである太ももの傷口が化膿し始め、傷口が6センチほど開いてしまったのです。はじめの1ヶ月は2日に1度通院し、その後は局所陰圧閉鎖療法と呼ばれる専門の器具を患部に装着して過ごし、傷口が完治するまで3ヶ月ほどを要しました。この間、傷口の痛みが続き、椅子やトイレの便座に座るのも大変でした。私の場合は皮膚が弱いこともあり、乳がん摘出&エキスパンダー挿入時も、乳房の再建時も、手術そのものより“その後”の方が大変だったような気がします。

自らの経験が誰かの役に立てればと、ブログを開設

乳房再建手術から1年後、太ももの傷口の縫い直し手術を行うのと同時に、傷口周辺の黒ずんでいる肥厚性瘢痕を利用して乳輪を再建しました。乳頭は乳房再建の際に肋軟骨を移植していたので、これで乳房再建手術が全て終わりました。

私自身が体験した“感染症の発症”や“太もも自家組織での乳房再建”、“自家組織摘出部位の傷口の化膿”などは、インターネット上でも情報が限られ、不安を感じることもありました。看護師さんには「あまりインターネットの情報を見過ぎないように」と言われたりしましたが、当事者としてはやっぱり見てしまうものですよね…。自分が経験したことが、少しでも誰かのお役に立てれば…と、2019年12月にブログを開設。あくまで個人の主観であることを断った上ですが、趣味のイラストを交えながら、その時感じていた率直な気持ちや、大変だったこと、今だから笑って言えることなどを綴り、コツコツと更新を続けています。ブログ開設から1年足らずですが、たくさんの方に読んでいただき、私自身の励みにもなっています。

手術後しばらく経って、体力面でも精神面でも負荷のない、やりがいのある仕事にめぐり合い、転職もできました。

私にとって、乳腺外科の先生が命の恩人なら、形成外科の先生は心の恩人です。健側と似た形に作っていただいた左胸。再建までの道のりは平坦ではなく、色々ありましたが、それだけに「かわいいやつだなぁ」と愛着が増し、今、前向きな気持ちで、オンもオフも充実した毎日を過ごすことができています。

*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。

(2020年9月 オンライン取材)

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このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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