• 公開日2022.04.12
  • 最終更新日 2022.04.20

確認用_2.手術後の傷をきれいに治すために…

医療用テープを貼って保護しながら、シャワー浴で常に清潔に

手術の傷は3カ月ほどで完全にくっつき、次第に目立たなくなります

手術による傷は、ケガややけどなどと同じく、一定の段階を経て治癒へと向かいます。最初の数日間は、傷が赤く腫れて痛んだり熱をもったりする“炎症反応”が起きます。これは、細菌などの感染から傷口を防御するための反応です。この間、傷の周辺には新たな血管が集まり、傷を修復する素材となる線維芽細胞が増殖して肉芽(にくげ)組織というものを形成し、部位によって数日ないし数週間をかけて傷は次第にふさがっていきます。

傷口がきれいにくっつくことを“癒合(ゆごう)”といいます。傷が癒合すると肉芽組織は縮小し、かわりにコラーゲンなどから生成された白っぽい組織が残ります。これを“瘢痕(はんこん)”といいます。瘢痕は、通常数カ月から1年ほどの間に成熟し、次第に目立たなくなっていきます。

手術による傷(切開創)が癒合までに要する時間は、欠損した皮膚の大きさや深さ、傷の部位などによっても異なり、個人の体質も影響するため、一概に何カ月ということはできませんが、たいていは1ヵ月から長くても3ヵ月ほどで元に戻ります

切開手術による傷の縫合は、表面に痕を残さない方法が主流です

皮膚は“表皮”と“真皮”からできていて、皮膚組織の大部分は真皮層が占めています。メスによる切開創を縫合する際は、真皮部分だけをその下の脂肪層にかかるまでしっかり縫合しておき、表皮部分の傷口はぴったり合わせるだけの方法が現在の主流です。表皮を縫わないため傷口周辺に縫い目が残らず、切開したところが白く細い瘢痕になるだけで、見た目にもたいへんきれいに傷を治すことができます。

ちなみに、傷の治りやすさには人種差があり、白人に比べてアジア系・アフリカ系の人は真皮が厚く、傷の治りが相対的に遅いといわれます。ただし同じ人種間であれば、肌の色と真皮の厚さに関係性はなく、「私は地黒だから治りが遅い」というようなことはありません。

表皮を縫わない方法では、医療用テープを貼って傷の癒合を待ちます

表皮を縫わない縫合では、切開した傷が開かないよう、手術後に傷の上に不織布のテープが貼られています。これは剥離刺激の少ない医療用のテープで、傷口が常にぴったりくっついた状態を保ち、傷の開きや盛り上がりを防ぐものです。しばらくは貼りっぱなしにしておき、やがて自然にはがれてきたら自分で貼り替えるようにしましょう。

不織布でできたロール状のテープや、シリコン製のジェルシートなどがあり、ドラッグストアや病院の売店、ネット通販などでいろいろなメーカーのものを購入することができます。

テープについては決まった貼り方はありませんが、ロール状のテープの場合は、テープを2~4cmほどの長さに切り、下図のように傷の方向に対して直角に貼るようにすると、傷が開こうとする力が分散され早くきれいに癒合します。テープの端を数ミリずつ重ねるようにすると楽にはがすことができます。
※貼り替えは2~3日に1度くらいで十分ですが、かゆみやかぶれが生じたときは使用を中止しましょう。

テープの貼り方

テープを貼る期間に決まりはありませんが、自家組織による乳房再建で腹部の皮膚・脂肪を切除した場合は、切除幅が大きいため、3カ月間は腹部の手術創にテープを貼ることが理想的とされます。傷の痛みや違和感がなくなれば、テープの使用を終えてかまいません。

傷をきれいに治すには、早期のケアが鍵です。傷口に、テープやシリコンジェルシートなどを、まめに貼り続けるということが大切です。目立った瘢痕がどうしても気になる場合は、形成外科や傷あと外来などの医療機関で相談してみましょう。

感染症を防ぐため、手術後の傷はシャワー浴で常に清潔に保ちましょう

手術による傷をきれいに治すうえでもっとも大切なのは傷を清潔に保つことです。汗や老廃物などの汚れが傷の周囲にたまると感染症の原因となり、かえって傷の治りを悪くしてしまいます。手術後、シャワー浴や入浴の許可が出たら、汗などの汚れを毎日シャワーで洗い流すようにしましょう。傷口が完全に癒えないうちは、術部に触れるのを怖く感じるかもしれませんが、石けんやボディソープをしっかりと泡立てて傷の上に乗せ、指の腹でやさしくなでるだけで汚れはかなり落とせます。手術時に貼られた医療用テープの上から洗っても問題ありません。

洗ったあとは石けん分が残らないようシャワーでしっかりすすぎます。シャワーによる適度な刺激は血行の促進にもつながります。
※傷が腫れて痛む、じくじくするなどの異常があるときは、自分でいじったり消毒したりせず、すぐ主治医に相談しましょう。

瘢痕や放射線照射部位の乾燥にはセルフケアによるマッサージが効果的

時間がたてば傷の赤みも収まり、やがて白っぽい瘢痕となり次第に目立たなくなっていきます。ただし瘢痕は皮膚ではないため、汗腺や皮脂線をもっていません。また放射線治療を受けている場合は、熱傷で汗腺や皮脂線の機能が損なわれていることが多く、こうした組織は正常な皮膚に比べ乾燥しやすくなります。

肌が乾燥すると肌本来のバリア機能が低下し、外界からの刺激に弱くなります。そのためアレルゲンや細菌が肌に侵入しやすく、感染を起こすことがあります。肌の乾燥はかゆみの原因にもなりますので、傷が治ったあとも乾燥が激しいときは、主治医に相談すれば保湿効果の高いクリームを処方してもらえるでしょう。日常的には、市販のオイルや保湿効果のあるクリームやローションなどでセルフケアを行うこともお勧めです。【写真は「ベーテルローション」株式会社ベーテル・プラス】

2020年10月9日更新

乳房再建医からのコメント

傷は焦らず治しましょう。気になるときは形成外科の主治医に相談を

  黄 聖琥(こう せいこ)先生

KO CLINIC 院長
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科

手術による切開創は、切った部分の皮膚を両側から糸で引き寄せて縫合するため、そこには元に戻そうとする物理的な力が働きます。とりわけ自家組織を使った乳房再建、特に腹部の脂肪組織や皮膚を移植する場合は、広いところで10~13cm幅ほども皮膚と脂肪組織を切除するため、この部分の皮膚を上下方向から引き寄せて縫合すると、縫合部にはかなり強いテンションがかかります。

切開創がきれいに癒合するまで、通常3カ月程度を要しますから、医療用テープで傷を保護する期間も“3カ月”がひとつの目安になります。皮膚の大きな切除を伴わない場合は、1カ月程度ですむ場合もあります。

ただ、体質によってテープかぶれが起きることがあります。放置すると傷口がきれいに治らないこともあるので、そのときはすぐ主治医の指導を仰ぐようにしてください。傷の痛みや痒みがなかなか引かない、傷が盛り上がってくる、といった状態がみられたときも同様です。万一、体質などの関係であまりに治りが悪い場合は、医師の判断でステロイドなどを適切に用いた治療を行う場合もあります(保険適用内)。

手術創に限らず、どのような傷も時間を経るほどに柔らかくきれいに治っていくものです。体質による個人差はありますが、傷周辺の赤みも3カ月から半年くらいの間にピークを越え、やがてきれいに引いていきますから決して焦る必要はありません。まだあまり一般的ではありませんが、最近はレーザー治療の併用で赤みの出る時期を短縮する技術も開発されており、ほかにも色々な対応方法がありますから、気になることがあれば形成外科の主治医に相談してみましょう。

乳房再建ハンドブック

本ページの内容は『乳房再建ハンドブック』内「手術の傷をきれいに治すためのセルフケア(P26)」にも詳しく解説しています。ぜひハンドブックも合わせてご参照ください。

このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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