患者さんの言葉にできない想いも感じ取り、その人に寄り添った説明を心掛けています
奥村 興(おくむら こう)先生
神鋼記念病院 形成外科 部長
術式:
・自家組織(腹部穿通枝皮弁がメイン、症例によっては広背筋、太もも)
・インプラント
標準手術時間:
・自家組織 腹部穿通枝皮弁5~8時間、広背筋皮弁4時間、太もも6時間
・エキスパンダー挿入 1時間
・インプラントへの入れ替え 1時間
標準入院日数:
・自家組織 穿通枝皮弁・広背筋皮弁10日~14日
・インプラント 5日
・二次再建エキスパンダー 1週間
乳頭・乳輪再建の時期:
・再建終了後半年以降~
・乳頭手術から2ヶ月後に乳輪タトゥー(日帰り手術)
「乳腺センター」で乳腺外科と連携した再建手術を実践
約15年前に神鋼記念病院に赴任した時に、本格的に「乳腺センター」ができたこともあり、形成外科医として乳房再建をやっていくことになりました。当院は「乳腺の先生に言われたから話を聞きに来ました」という患者さんも多いです。乳房再建は主治医である乳腺の先生に勧められると患者さんも手術に前向きになられるように思います。
乳房再建はすべての患者さんが受けるべき手術というわけではありません。ボディーイメージの変化に納得できない人に対しては非常に意義がある、意味のある手術であると思います。そして術後の患者さんの喜びようを目にすると、私たちが思うよりもずっと、患者さんに喜びや希望を与えることができるんだな、と思いますし、私自身もその患者さんの笑顔を見てやりがいをもらっています。患者さんはインプラントだと80代、穿通枝皮弁でも70代後半で再建された方がおられます。年齢は全く関係ありません。
患者さんに寄り添う“コンシェルジュ”ナースの存在は大きな支え
形成外科の初診は「三段階」で行っています。まずは『乳房再建手術HandBook』を読んでもらい、外来では看護師と私の二段階で説明します。乳房再建の説明が出来る、いわば“コンシェルジュ”のような看護師が3名おり、診察の前に患者さんのバックグラウンドから希望まで、時間をかけて話を聞いてから、術式や手術の特徴を説明します。その後、私のところでは術後や術中の写真などを見てもらい、診察したうえで私の意見を伝えます。手術に関してはフラットな説明をしますが、患者さんが求めているものを感じ取りながら、できるだけその人に沿った説明ができるよう心掛けています。ここは大事なところなので、私の診察だけでも45分はかけています。“コンシェルジュ”ナースたちは診察後も患者さんに寄り添って、聞きそびれたことがないか、理解できたかなどについてフォローしてくれるので、すごく助かっています。
綿密な術前シミュレーションをすることでより安全・安定した結果を
穿通枝皮弁の場合、非常に綿密に術前シミュレーションを行います。穿通枝という細い血管を確認するために造影CTを必ず撮りますが、私は造影CTを撮るクリニックのワークステーションでお腹の脂肪量から体積、乳腺の先生が取る乳房の体積などをすべて計算します。計算したうえで、使う穿通枝の選択や具体的な術中の段取りをすべて術前に決めておきます。そうすることで、術中にベッドを起こしてシミュレーションする回数を減らすことができ、手術時間も無駄にかからず、安全に安定した結果が得られると考えています。
今ある技術を完璧に近づけることが大切であり、地域格差の解消にもつながる
穿通枝皮弁による自家組織再建は地域によってはまだ一般的でないところもあると聞いています。手術が難しいと思われている側面もあると思うので、今ある技術を「簡単かつ安全で安定したもの」に緻密に定型化していくことも私の責務だと思っています。まだ現状では全国どこででも同等のレベルの乳房再建ができる状態ではないように思います。わざわざ東京や大都市にいって、ということではなく、ご自身の住んでいるところである程度レベルの高い乳房再建手術が受けられるようになることを期待しています。
時には直感も大切。情報を集めすぎてひとりで苦しまないで
患者さんに無駄に痛い思いはさせたくないので、専門医から見て「これは手術について少し誤解をされているな」と思う場合は、理解し納得してもらえるように説明に努めます。患者さんのためにそこは引きさがらないようにしています。
また時には患者さん自身の直感も大事だと思います。説明を聞いてぱっと「私、この方法がいい!」と、割にあっさりと決める患者さんも結構おられます。大きく間違っていないのならば、それでいいと思います。情報がありすぎると、患者さんもいろいろ知りすぎて却ってわからなくなってしまいます。すべてを理解するのはとても難しいうえに、乳がんと言われて混乱している患者さんならなおさらです。医師に会う前に勉強することも大事ですが、自分でそこまで苦しむ必要はありません。そういう意味ではある程度直感も大事だし、まずは専門の医師の意見を聞いていただくことが近道だと思います。
(2022年6月 オンライン取材)
名称 | 神鋼記念病院 | ||
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所在地 | 651-0072 兵庫県神戸市中央区脇浜町1-4-47 | ||
診察時間 | 月、火、水、金の午前中 ※2022年6月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。 | ||
休診日 | 土、日、祝祭日、年末年始(12月30日~1月3日) | ||
TEL | 078-261-6711(代表) | ||
URL | https://shinkohp.jp/department/keisei_geka/ |