入れ替え手術の3週間前にインプラントがリコールに! そのままコロナが蔓延、エキスパンダーを入れたまま全く先が見えず、とてもとても不安でした
*2024年10月発行 写真集『New Born -乳房再建の女神たち-』(撮影:蜷川実花、企画:NPO法人E-BeC、発行:赤々舎)に収録しているモデルの経験談「わたしのストーリー」より
千葉県 N.Aさん(49歳)
手術方式:一次二期再建(インプラント)
・乳がん手術
2019年1月 左乳房全切除術+エキスパンダー挿入
執刀:三和病院 乳腺外科 長谷川 圭先生(非常勤)渡辺 修先生
エキスパンダー挿入:三和病院 形成外科 植村法子先生
・乳房再建手術
2021年1月 オンプランと入れ替え(左)
執刀:三和病院 形成外科 植村法子先生
・乳頭乳輪再建手術
再建していない
・乳がん治療
術前治療:なし
術後治療:ホルモン療法(タモキシフェン5年)
左乳房にコリッとしたものがあることは少し前から気づいていました。ただ2人の子どもは幼く、仲間と起業した「介護施設専用キッチンカー」のクラウドファンディング中で大忙しということもあり、深刻に考えないようにして、乳がん検診の日を待ちました。44歳のことです。
結果が出る前に「なるべく早く乳腺科を受診するように」と連絡がありました。受診した日の午後には、女性の医師から「乳がんです、全部取っちゃおうか」と、明るくさばさばと言われ、考える暇もなく「ハイッ」と返事をしていました。深刻な雰囲気の告知なら、もう少しショックだったかもしれませんね。
周りに乳がんになっても元気な人が何人かいたことと、「いま死んでる場合じゃない」という強い気持ちがあって、冷静に受け止められたと思います。授乳を終えていたので全摘出でいいと思いましたが、あとからホローっと涙が出たので、やっぱり悲しかったのかな。
カポエイラという格闘技とヨガの指導者もしていて、着替えるときに周りに詮索されるのが嫌で、乳房再建を希望しました。再建する理由には親友のこともありました。彼女は保険適用になる前に乳がんになり、再建を諦めたがゆえに恋愛も結婚も踏み切ることができず、のちに亡くなりました。乳房を失ったことであきらめた苦しい胸の内をよく聞いていたのです。
再建は、仕事柄お腹や背中にキズをつけたくないことや脂肪が少ないこと、入院期間が短いことから、インプラント一択。
ただ、再建までの道のりは順調ではありませんでした。エキスパンダーからインプラントへの入れ替え手術の3週間前、2019年7月にインプラント製品がリコールに! そのままコロナが蔓延し、エキスパンダーを入れたまま全く先が見えなくって、とてもとても不安でした。
新たに保険適用となった安全なインプラントへの入れ替え手術がようやく受けられたのは手術から2年後でした。格闘技の許可も出ましたが、なるべく直接ケリが当たらないように言われました。
再建した乳房は、じっと見なければ分らないほど自然。なにより更衣室で、「見せて」「触らせて」、「乳がんになってもこんなふうに自然に再建できるのねっ」、とたくさんの女性が関心を示してくれたことが嬉しくて。もっと多くの女性に知ってもらいたいと思いました。
乳頭乳輪は必要を感じないのでつくっていませんが、温泉でも周りは気にしていないようです。
新たな乳房が完成したころ、休業に追い込まれていたヨガ教室やキッチンカーも再開し、すべてが動き始めました。その流れの先に、この写真集がありました。
再建によって不自由さを回避できることや、あきらめなくていいことってあります。自由を手に入れた私は、これからも多くのチャレンジをしていきたいと思うのです。
2024年5月 インタビュー:山崎多賀子
写真集『New Born -乳房再建の女神たち-』のメイキング動画はこちらから
https://www.e-bec.com/ninagawa-mika-model
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