「なんで切らなくちゃいけないの?」と泣いた私が全摘を決断し、再建を選び、心から幸せと感じるまで
*2024年10月発行 写真集『New Born -乳房再建の女神たち-』(撮影:蜷川実花、企画:NPO法人E-BeC、発行:赤々舎)に収録しているモデルの経験談「わたしのストーリー」より
兵庫県 MYさん(35歳)
手術方式:一次一期再建(自家組織)
・乳がん手術
2024年2月 左乳房乳頭乳輪温存乳房全切除術
執刀:神鋼記念病院 乳腺科 山上和彦先生
・再建手術
2024年2月 腹部穿通枝皮弁(左)
執刀:神鋼記念病院 形成外科 奥村 興先生
・乳がん治療
術前治療:なし
術後治療:なし
2人目の子どもを出産後、生理不順で低用量ピルを処方していただく婦人科から、定期的に乳がん検診を受けるように言われて、2回目の検診のエコーにしこりが映りました。乳腺クリニックで受けた検査は陰性。ホッとしたのもつかの間、しこりの原因を調べるために提携している病院でMRIを撮るよう指示があり、もっと詳しく検査することになりました。
結果は乳がんでした。診断がつくまで半年かかり、悪性なの?良性なの?とずっと続いたもやもやが、本当に辛かったです。
手術は全摘も温存も可能と言われましたが、再発リスクがわずかでも低いことと、全摘して再建したほうが乳房の形はきれいに残ると医師から聞き、乳首を残して全摘。時に、お腹の組織を移植する自家組織再建に決めました。
14歳の長男には、私の留守中に主人が伝えていました。専業主婦の私が10日間以上も入院するので、「男同士で頑張っていこうな」と言ったら、ポロポロ泣き出したそうです。私の前ではポーカーフェイスでしたが、やがて「どこを切るの?」とちょこちょこ聞いてくるようになり、私も「お腹から持ってきてここへ入れるんだって。すごくない?」と治療の話も普通にするようになりました。
ただ、手術日が近づき現実味をおびてくると、どこか他人事に思えていた私はどんどんネガティブになってしまって。乳首まで斜めのキズができ、お腹に40センチも傷ができるのが、どうしても嫌で、「自覚症状もないのに、なんで切らなくちゃいけないの?」「傷をつくるくらいなら、死にたい」と主人にあたってしまいました。主人は、「生きていてほしいから、そんなこと言わないで」となだめてくれますが、気持ちを切り替えることができませんでした。
そんな超ネガティブだった私に希望の光がともったのは、手術前夜にこの写真集の記事を見たときでした。ネット検索で見つけて運命的なものを感じました。有名な写真家さんに一般人が写真を撮ってもらうなんて一生ないこと。「再建していて、この時期にこの募集を見ていた人だけが応募できるなんて」。乳がんになった意味が少しはあったのかなと思え、モデルに応募することを目標に、治療を頑張ろうと思いました。
手術前に皮膚の近くに新たな影が見つかり、楕円にくりぬいたため、傷あとがZ型になっています。まだ術後間もないので目立ちますが、傷がなければ以前とほとんど変わらないシルエットでとても気に入っています。
長男は私の代わりに4歳の次男の抱っこをしたり、色々手伝ってくれて助かっています。小さいお子さんがいる乳がん患者さんは、家族のサポートが必要だと実感することと、若い年代で乳がんになっても、そんなに怖がらなくて大丈夫だよと私の経験から伝えたいです。
全摘して再建して、モデルというご褒美をもらえ、今、心の底から幸せに感じています。
2024年5月 インタビュー:山崎多賀子
*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。
写真集『New Born -乳房再建の女神たち-』のメイキング動画はこちらから
https://www.e-bec.com/ninagawa-mika-model
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