「美しく自然な再建は患者さんの心の回復にも貢献」矢島和宜医師
矢島和宜(やじまかずよし) 医療法人 蘇春堂形成外科 (札幌市 2014年3月末にがん研有明病院から異動されました)
術式 : インプラント、自家組織(穿通枝皮弁)
標準手術時間 : インプラント 約2時間
自家組織 7~8時間
標準入院日数 : インプラント 約3日間
自家組織 約10日間
乳頭・乳輪形成 : 実施は再建手術の6カ月後以降が目安
※方法は、再建乳房の局所の皮膚を立ち上げタトゥーで色を入れる方法、
もしくは対側(健側)からの移植法が主体
手術の方式はさまざまな条件をもとに総合的に判断します
がん研有明病院では、乳房再建はオンコロジー(腫瘍)治療の延長線上にあるという考え方をとっています。乳房再建を前提に乳がん手術を行う場合は、乳房全摘出の後、病理結果をしっかりと確認し、転移・再発のリスクがきわめて低いことを確認したうえで再建手術へと進みます。したがって乳房全摘出後にティッシュエキスパンダーを挿入し、適切な期間を経た後に乳房再建を行う“一次的二期再建”となります。現在、インプラントへの入れ替えでおよそ3~4カ月、自家組織による再建は10カ月程度お待ちいただいています。
私は、シリコンインプラントによる再建と自家組織による再建の2つをメインの術式としており、自家組織ではお腹の脂肪をドナーとした穿通枝皮弁を用いる方式を主体としています。これは筋肉の中を走ってくる血管を皮膚や脂肪組織に1本だけ付けて移植するもので、下腹部からドナーとなる部分を摘出する際に周辺の筋肉や神経を犠牲にすることが少なく、その部分の機能低下を最低限にとどめられるという利点があります。
自家組織を用いる方法は、乳房に比較的ボリュームのある方や下垂傾向のある方に向いており、とても自然な形に再建することができます。一方、乳房の形やドナー部分の状況、入院・手術に割ける時間の余裕などによってはインプラントのほうが適している患者さんもおられます。さまざまな条件をバランスよく勘案して、ご本人の希望もじっくりお聞きしたうえで、最適な手術方法を選択していくことになります。また、以前は当院で手術された方のみを対象に乳房再建手術を行っていましたが、現在は他の病院で手術された方の再建手術も行っています。
患者さんと医師がともに結果を喜びあえる再建手術をめざします
再建医療では通常、欠損した身体部分の機能回復と整容性(見た目の美しさ)のバランスを最も重視しますが、乳房再建はほぼ純粋に整容の見地からの再建をめざすもので、形成外科医がクリエイティビティを発揮できる領域といえます。私自身もさまざまな方法を試みることで、再建乳房に少しでも自然な形や柔らかさが表現できるように研鑽を重ねてきました。
乳房の整容回復は、患者さんたちのメンタル面の回復にも大きく貢献するという意義があります。乳房をより美しくより自然に再建することで、がん治療を克服した女性たちが自信を取り戻し、明日に向かって生きていくモチベーションを得ていくステップを提供することは、乳房再建を手がける医師としての最大の喜びでもあるのです。
乳房再建を考えながら、どの病院や医師を選択すればよいか迷っている方は、まずご自分の価値観をストレートに主治医に伝えてみてください。主治医も患者さんとの価値観の共有を何より重視しており、信頼関係のなかで一緒に治療を進めていける主治医に出会えれば、きっと満足のいく再建ができるはずです。手術によってできることには限界がありますが、再建手術に関する正しい知識を得ていただき、それぞれの治療の状況や制約を踏まえたうえで、ともに最善の方法を追求していけるよう最大限の努力を続けていきたいと思います。
(取材:2013年1月)
名称 | 医療法人社団 蘇春堂形成外科 | ||
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所在地 | 〒060-0061 札幌市中央区南1条西4丁目大手町ビル2F | ||
診察時間 | 月・火・木・金 10:00~18:00、 水・土 10:00~14:00(予約制。受診の際は乳腺外科主治医の紹介状が必要)※2013年1月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。 | ||
休診日 | 日曜・祝日 | ||
TEL | 011-222-7681 | ||
URL | http://www.home-dr.jp/hosp_data/chuoh/soshundoh/ |