「“夢のようにきれいな乳房”の再建という理想に向かって」 高柳 進医師
高柳 進(たかやなぎすすむ) メガクリニック院長(大阪市)
術式 : ・シリコンインプラント ※必要に応じて脂肪注入、脂肪移植、脂肪弁を併用
・自家組織/腹直筋皮弁、広背筋皮弁
連携病院 : 北野病院(大阪市北区。自家組織による手術・入院の場合)
標準手術時間 : ・腹直筋皮弁 5~6時間、広背筋皮弁 4~5時間
・エキスパンダー/インプラント挿入 各2時間
標準入院日数 :・自家組織/腹直筋皮弁 約10日間、広背筋皮弁 約2日間
・ティッシュ・エキスパンダー挿入 1泊、インプラント挿入 日帰り
乳頭・乳輪形成 : 実施は再建手術の3カ月後以降が目安
※再建乳房の局所の皮膚の立ち上げ+タトゥーによる着色、健側からの移植など
あるべきものを取り戻すため、形成外科医としての最高の技術を提供
私が乳房再建を手がけるようになって30年以上になります。1980年ごろ、アメリカではすでに乳房再建手術がさかんに行われており、なかでもノースカロライナ州のデューク大学には、乳房再建では世界でも最も多くの症例経験をもつジョージ・エイド教授がおられました。私は同教授に何度も師事しながら、人工物から自家組織まで幅広い技術を学び、日本ではまだほとんど手がける人のなかった乳房再建手術の症例を増やしていきました。
形成外科では、医師の技術が明らかな見た目となって現れます。きれいな手術ができるかどうかは、基本的に医師である自分の技術力にかかっています。とりわけ美容の側面を強くする乳房再建では、左右バランスの整ったきれいな胸を作ることには患者さんの心の面からも大きな意義があり、医師の技術力が大いに問われる領域だと思っています。
かつて80歳を過ぎた女性の乳房再建手術を手がけたことがあります。乳腺外科の医師から、「いい歳なのだから、再建はもういいでしょう・・・」と言われ、「私も女性なのだから」と憤慨していたその患者さんの思いは、乳房再建に年齢など関係ないことを物語っています。あるべきものを取り戻すテクニックがある以上、あらゆる患者さんに、形成外科医としてできる最高の技術を提供していくのはごく当然のことだと考えます。
多くの患者さんが乳房再建手術を受けられる時代がやってきました
インプラントが保険適用となったことで、乳房再建を希望する方は明らかに増えてきました。手術費用の問題が軽減され、乳腺外科医から形成外科へ患者さんを紹介しやすくなったこともあるでしょう。
乳房再建にはさまざまな術式があり、それぞれに長短所があります。患者さんには、各術式の良いところとリスクをすべて説明したうえで希望の方法を決めていただきますが、やはり体への負担や入院期間の短さなどから、8~9割の方はシリコンインプラントによる方法を選ばれます。
一方で、ティッシュ・エキスパンダーやインプラントによる手術実施施設の認定制度が始まり、今後は乳房再建をあまり経験してこなかった形成外科医による手術機会も増えていきます。インプラントメーカーも医療機関向けの講習会を重ねていますし、実績のある施設が経験の浅い医師たちの見学・指導を受け入れる体制が広がることで、やがては全体的な技術の向上が図られていくものと思います。
近い将来には、ほんとうに夢のようにきれいな乳房の再建が可能に!
乳房再建を手がける形成外科医にとっての究極の夢は、患者さんが持って生まれてきたそのままの胸を再建することです。現代では、さまざまな研究アプローチによってこうしたことも夢ではなくなってきており、たとえば手術の傷をきれいに消す技術などは近い将来現実のものになると思います。
乳房再建医にはもうひとつ、仰向けになっても自然な左右対称形になる乳房をつくるという、なかなか果たせずにいた大きな夢があります。現在の技術では、自家組織を使っても、仰臥したときに再建していない胸と同じように流れる胸をつくることは難しいのですが、シリコンジェルの軟度や流動性を部分的に変えたシリコンインプラントも登場しつつあり、いま以上に自然な乳房を再建できるようになるのもそう遠いことではありません。“夢のようにきれいな”乳房再建手術の実現にむけて、形成外科の技術はまだまだ向上していきます。
(取材:2014年7月)
名称 | メガクリニック | ||
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所在地 | 〒533-0033 大阪市東淀川区 東中島1-18-5 新大阪丸ビル2F | ||
診察時間 | 月~土 10:00~18:00、 要予約 ※2014年7月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。 | ||
休診日 | 日曜・祝日 | ||
TEL | 06-6370-0112 | ||
URL | http://www.mega-clinic.com/ |