乳房再建までを視野に入れた乳がん手術を示され、治療に臨む決断ができました
広島県 MSさん(61歳)
手術方式:「一次二期再建」
(乳がん手術と同時にエキスパンダーを挿入。半年後にインプラントに入れ替え)
・乳がん手術:2014年11月 乳頭くり抜き乳輪温存乳房切除術で左乳房切除
執刀・広島市立広島市民病院 乳腺外科 伊藤充矢医師
・乳房再建手術: 2014年11月 ティッシュエキスパンダー挿入
2015年5月 インプラント入れ替え
2015年8月 乳頭再建(健側からの移植)
執刀・広島市立広島市民病院 形成外科 身原弘哉医師
術前治療:なし
術後治療:ホルモン剤(アリミデックス)5年間
全摘といわれたショックをやわらげてくれた乳房再建手術の存在
50代後半まで一度も乳がん検診というものを受けたことがなく、たまたま自治体から検診のお知らせがあったとき、夫に勧められて受けたのが初めてのマンモグラフィ検査でした。結果、両胸に石灰化が認められ、超音波検査でも怪しげなところがあるからと、市民病院の乳腺外科を紹介されました。
最初に受けた針生検ではよくわからず、何度か検査を繰り返した末、最終的にもっと太い針で検査したところ乳がんと判明。ところが「ステージ0だが左乳房全摘」という診断です。なぜそうなるのか納得がいかず、「たまたま受けた検査。何度も調べなければ見つからなかったんだし、いっそ何もなかったことにしてしまおうか…」などと考えだす始末です。手術が決まるまで、何度このままやめようと思ったかしれません。
でも主治医から乳房再建について詳しい説明を聞かせていただくにつれ、その気持ちも大きく変わっていきました。市民病院の乳腺外科は、乳房再建までを視野に入れて乳がん治療に臨んでいて、再建手術には色々な方法があることや、私の希望やライフスタイルに合わせた方法が選べることなどを、たくさんの症例写真とともに説明していただき、それが手術に対する安心や信頼感につながったのだと思います。
乳輪を温存したまま乳頭・乳腺を切除する乳がん手術
ただ唯一の心配は、大好きなテニスとゴルフができるようになるかどうかでした。手術のために好きなことができなくなったら、私のこれからの人生はもう真っ暗です。左胸の切除だったので利き手の右腕には大きな影響がなかったこともあり、主治医が「大丈夫」と保証してくださった通り、乳がん手術の3ヵ月後にはテニスを再開。エキスパンダーの入った違和感を覚えながらではありましたが、好きなことをいままで通り楽しめる喜びに勝るものはありません。ゴルフも半年後には始めることができました。
さらにインプラントへの入れ替えが終わった3ヵ月後に、乳頭の再建手術を受けました。私の場合、乳輪はそっくり残して乳頭部分を乳腺と一緒に切除してあり、乳頭のあった部分には別の部分から採取した皮膚を円形に植皮。乳頭再建にあたっては、その皮膚を薄くはがしたところに健側の乳頭を半分に切って移植する「乳頭くり抜き乳輪温存乳房切除術」という方法がとられました(手術方法についてはこちらを参照してください)。乳頭の再建までを終えた胸はほんとうにきれいで、伊藤先生と身原先生には心から感謝しています。
再建していなければ、いまほど好きなことが楽しめなかったでしょう
再建手術を経験された方は、術後の下着に悩まれるとよく聞きます。私もいろいろなものを試してみましたが、自分に一番合っていると思ったのは、ジニエブラのようなノンワイヤーでホックのないパッド入りブラです。胸元全体にフィットして、インプラントを入れた胸を適度にサポートしてくれる感触が心地よく、入浴時以外はほとんど常時これを着用しています。
手術後も、腕のむくみやしびれなどの不具合は特になく、乳がん告知を受けたことをなかったことにしたいとまで思い悩んだ日のことが嘘のようです。再建していなければ、いまごろは人目を気にして温泉にも行けず、スポーツも前ほどは楽しめなかったでしょう。インプラントの違和感がまったくないわけではありませんが、好きなことが普通にできることは何より嬉しいものです。
もちろん乳がんにならないに越したことはありません。でも早く見つけて治療に臨み、乳房再建を行えば以前とほとんど変わらない日常に戻ることができます。私がそうだったように、乳がん治療への不安と戸惑いで手術をためらっている患者さんがいらっしゃれば、ぜひ再建までを視野にいれて考えてみてほしいと思います。