2021 Zoomで乳房再建ミーティング

昨年に引き続き、しばらくは新型コロナウィルスの影響でキャラバン・セミナーが開催できないため、2021年もオンラインで乳房再建スモールミーティングを開催します。
定員は10名、4~5名の自家組織、インプラント、脂肪注入で再建したサポーターが自身の経験を参加者の皆さんにお伝えしています。

◇1月9日(土) 12:00~14:00

《Zoomで乳房再建ミーティングの様子》

第6回 2020年12月13日 E-BeCオンラインセミナー「がん経験者のためのヨガ」

第6回E-BeCオンラインセミナー「がん経験者のためのヨガ リンパ浮腫編 ~症状にあったポーズで無理なく身体を動かす~」を開催しました。
第5回目のテーマだったリンパ浮腫に関連して、リンパの流れを促すヨガを、がんサバイバー(がん経験者)のためのヨガ認定講師の指導で、参加者のみなさんと一緒にヨガを行う参加型プログラムで、ティーペック株式会社にご協力いただき初のウェビナー開催となりました。
講師とインストラクターは、がんサバイバーためのヨガ「yoga4cancer(y4c)」の創始者Tari Prinsterから直接指導を受けたy4c認定講師RaviさんとMahokoさん、Tari先生から参加者の皆さんへのビデオメッセージも届きました。

《概 要》
日 時:2020年12月8日(日)11:00~12:30
講 師:Ravi先生(y4c認定ヨガ講師)
インストラクター:Mahoko先生(y4c認定ヨガ講師)
参加費:1000円
参加者:計45名
対 象:乳がん経験者

≪オンラインセミナーの様子≫

第5回 E-BeCオンラインセミナー「リンパ浮腫の予防・治療のいまとこれから~乳がん治療後のあなたの腕を守るために~」

第5回E-BeCオンラインセミナー「リンパ浮腫の予防・治療のいまとこれから~乳がん治療後のあなたの腕を守るために~」を開催しました。
リンパ浮腫は1度なってしまうと治らないため、一生付き合っていかなくてはなりません。
初期の段階で気が付けば、日々のケアで症状が改善することもありますが、進行が進むと外科療法も必要になってきます。しかし、リンパ浮腫を専門に診る病院は限られていて発見が遅れることもあります。
今回のセミナーでは、軽症、中等度、重症それぞれの場合の治療と、どのようにリンパ浮腫が発症するのかなど、日本でも数少ないリンパ浮腫治療の専門家である林先生にお話をお聴きしました。

《概 要》
日 時:2020年11月8日(日)12:00~13:30
講 師:林 明辰先生(亀田総合病院/亀田京橋クリニック リンパ浮腫センター センター長)
参加費:1000円
参加者:計90名
対 象:乳がん経験者

≪オンラインセミナーの様子≫

第4回 E-BeCオンラインセミナー「脂肪注入による乳房再建」

第4回E-BeCオンラインセミナー「人脂肪中による乳房再建」を開催しました。
保険適用が望まれ、関心が高い脂肪注入による乳房再建ですが、実際のところはどうなのか、傷あとも残らず入院期間も短いとメリットが多いように思われますが、希望すればだれもができるものではありません。
講師は元昭和大学病院形成外科の草野先生。脂肪注入による乳房再建の実際について詳しくお話いただきました。

《概 要》
日 時:2020年10月10日(土)14:00~15:30
講 師:草野太郎先生(くさのたろうクリニック 院長)
参加費:1000円
参加者:計83名
対 象:乳がん経験者

≪オンラインセミナーの様子≫

第3回 E-BeCオンラインセミナー「人工物再建のホントのところ」

第3回E-BeCオンラインセミナー「人工物再建のホントのところ」を開催しました。
8月に米国シエントラ社のシリコンインプラントが薬事承認された直後ということもあり、定員を上回る申し込みがありました。
講師はインプラント再建の第一人者、岩平先生。
インプラントは自分にあったものを選ぶこと、エキスパンダーがきれいに入っていることの大切さをお話くださいました。

《概 要》
日 時:2020年9月13日(日)14:00~15:30
講 師:岩平佳子先生(医療法人社団ブレストサージャリークリニック 院長)
参加費:1000円
参加者:計92名
対 象:乳がん経験者

≪オンラインセミナーの様子≫

第2回 E-BeCオンラインセミナー「乳頭乳輪の再建手術~いろいろな術式と留意点について専門家に聞いてみよう~」

第2回E-BeCオンラインセミナー

「乳頭乳輪の再建手術~いろいろな術式と留意点について専門家に聞いてみよう~」を開催しました。
E-BeCのウェブサイトの中でもアクセスの高いテーマです。
講師の小宮先生は乳頭乳輪の再建にも力を入れていらっしゃいます。
乳頭乳輪の再建動画では、かまぼことハンペン、コーヒーを使ってリアルに再現してくださいました。

《概 要》
日 時:2020年8月1日(土)14:00~15:00
講 師:小宮貴子先生(東京医科大学形成外科)
参加費:1000円
参加者:計63名
対 象:乳がん経験者

≪オンラインセミナーの様子≫

第1回 オンラインセミナー「手術後の傷をきれいに治すために」 

6月28日、第1回E-BeCオンラインセミナー「手術後の傷をきれいに治すために ~セルフケアについて専門家がお教えします~」を開催しました。
E-BeC理事でWOC看護師の西出薫が、テープや保湿剤など市販のものを使ったセルフケアの方法を、製品を紹介しながらお伝えしました。

《概 要》
日 時:2020年6月28日(日)14:00~15:30
講 師:西出 薫(NPO法人E-BeC理事、下北沢病院外務担当部長、WOC看護師)
参加費:1000円
参加者:計54名
対 象:乳がん患者さんをはじめ手術後の傷ケアに関心のある方ならどなたでも

《オンラインセミナーの様子》

 

 

 

 

2020 Zoomで乳房再建ミーティング

2020年は新型コロナウィルスの影響でキャラバン・セミナーが開催できなくり、これまで行っていた体感会も行えなくなりました。
そういった中で乳房再建の情報を必要としている方のため、5月よりオンラインでスモールミーティングを毎月開催してきました。
日本各地、海外からの参加もありオンラインならではのメリットがあります。
定員は10名、4~5名の自家組織、インプラント、脂肪注入で再建したサポーターが自身の経験を参加者の皆さんにお伝えしています。

◇5月23日(土) 14:00~16:00
◇7月18日(土) 14:00~16:00

◇8月15日(土) 14:00~16:00
◇9月6日(土)   14:00~16:00
◇10月17日(土)  12:00~14:00
◇11月14日(土)  12:00~14:00
◇12月5日(土) 12:00~14:00

《Zoomで乳房再建ミーティングの様子》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乳房全摘から20年。再び膨らんだ右胸をごく自然に受け入れている自分がいました

千葉県 UAさん(60歳)

 

 

 

 

 

 

手術方式:二次二期再建
(右乳房全摘し、20年後にエキスパンダー挿入、腹部自家組織で再建)

・乳がん手術
1999年12月 右乳房全摘手術
執刀:国立がんセンター東病院 井本滋医師(当時)
・乳房再建手術
2019年2月 エキスパンダー挿入
2019年10月 腹部自家組織(穿通枝皮弁法)で再建
執刀:東京医科歯科大学 形成・美容外科 森弘樹医師
・乳頭乳輪
2020年6月 乳頭:肋軟骨を芯にして皮弁の立ち上げ
2020年11月 乳頭乳輪:タトゥーで着色
執刀:東京医科歯科大学 形成・美容外科 森弘樹医師
術前治療:なし
術後治療:抗がん剤治療(半年間)、ホルモン治療(タモキシフェン・5年間)

乳房全摘後19年目に、衝撃の事実。まさに“天からの啓示”!?

「えええーーー!!!保険適用で乳房再建できるんですか?」

あまりにビックリしすぎて、診察室でとてつもなく大きな声を出してしまった私。看護師さんにクスッと笑われていることすら咄嗟には気がつかないほどの衝撃でした。

乳がん治療で39歳の時に右乳房を摘出してから19年間、平らな右胸に「これが私の個性。おっぱいが無くても強く生きる!」と自分に言い聞かせて過ごしてきました。乳房摘出の際には200万円とも300万円とも言われた乳房再建手術費用。
当時、子どもたちは中学3年生と小学6年生。教育費などを考えると、とても自分の乳房再建に高額な医療費を払える状況ではなく、きっぱりと諦めました。
だから私のカルテには「乳房は再建しない」という情報が記されていたのだと思います。乳房摘出後の定期検診で乳房再建の話題がのぼることはなく、乳房再建術が保険適用になるというニュースも私の耳には届かないまま、19年もの月日が流れていきました。幸い再発が無く、主治医に「今後は近くの病院で定期検診を受けてください」と転院を勧められて松戸三和病院へ。初回検診の時に乳腺外科の先生に“保険適用”での乳房再建を提案され、その衝撃の事実にただ驚くばかりでした。

毎晩、お風呂に入るたびに鏡に映る自分の姿。「これが私」と受け入れてはいましたが、温泉に行けばよその小さな子どもに怖い思いをさせてしまったり、下を向いてかがんだ時にブラの中に入れたパッドが首元から飛び出してきたり、その度に“乳房が無い”という現実を突きつけられ、悲しい思いをすることもありました。
でも何より、いつか人生を全うしてお棺に入る時、身体に欠損のない状態で入れたら・・・という思いが年々大きくなっていたのです。還暦を前に、まさに天からの啓示のようなタイミングでした。

膨らみの戻った右胸。自然であたたかみのある乳房に、感動!

松戸三和病院の形成外科で外来を担当されている東京医科歯科大学の先生から、乳房再建について詳しくお聞きし、再建することを決めました。しかし術式を巡っては色々と思い悩みました。長い間、人工的なゼリー状パッドをブラジャーの下に入れていたことから、柔らかくてあたたかい自家組織での再建に憧れを抱いたものの、シニアモデルとして活動しているため、ウエストまわりに大きくメスを入れることにも抵抗がありました。あれこれと思い悩んで結論が出ない私に、先生がご紹介くださったのが、東京医科歯科大学教授の森弘樹先生です。森先生は自家組織再建について私のたくさんの質問に熱心に答えてくださいました。また、製薬会社で働く娘からの後押しもあり、ようやく自家組織を移植して再建する決心がついたのです。

まずはエキスパンダーを入れる手術を行い、20年間近く平らだった私の右胸に膨らみが戻りました。当初は皮膚や大胸筋が引き攣れるような痛みを感じ、辛くなることも。それでも、エキスパンダーで膨らみの戻った右胸をごく自然に“自分の胸”として受け入れている自分がいました。乳房を摘出したときは、“無い”ことを受け入れるのに時間がかかりましたが、“有る”ことを受け入れるのはとても早く、自分でも驚きました。その後、胸と乳頭乳輪の再建を経て、私の右胸は左胸そっくりに生まれ変わりました。そのひとつひとつのプロセスが感動的で、毎回スマホでおっぱいの写真を撮影し、今でも自分の記録として大切に保存しています。

今後は他の誰かのために“心身のケア”を。仕事に、趣味に、新しい人生を満喫中

乳房再建が完了するのとほぼ時を同じくして、還暦を迎えました。

それまでの30年間は小学生向けの塾講師やボーイスカウトの指導者、さらにシニアモデルなど、たくさんの仕事を並行して続けてきました。さらにここ10年ほどはエステティシャンとして、お客様に“心身のケア”を提供することに自分の役割を見出すようになりました。エステティシャンとしての技能をさらに高め、より良いケアをお客様に提供するため、今はレベルアップの資格試験にチャレンジしているところです。
人生の経験を積み重ねた自分だからこそできる癒しを追及するために、まずはお客様のお話をゆっくり受け止め、求められれば自分の中にある経験は包み隠さずお伝えするようにしています。

趣味で声楽も楽しんでいます。これも、聴いてくださる方に心から癒されてほしいという想いの表れです。これまでは左右の胸の差を気にするあまり、胸元を強調するデザインや、デコルテが大きく開いたステージドレスを敬遠してきましたが、今後は堂々と身に着けることができそうです。今からステージに立つのが本当に楽しみです。

乳がん治療を経て、乳房再建の道を拓いてくださった先生方、そして右胸を再建してくださった森先生には、感謝してもしきれません。右胸ができたことが本当に嬉しく、親しい方にはビフォー・アフターの私のおっぱいの写真を見せることもあります。夫からは「そういうのは、あまり人様に見せちゃダメなんじゃないか・・・?」とたしなめられることもありますが(笑)。

再建を終えて感じることは、まず一歩踏み出すことの大切さです。やらずに後悔するよりも、やってみることで、世界は必ず広がります。乳房再建を経て、今、また頑張ろうという気持ちでいっぱいです。

(2020年11月 オンライン取材)

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患者さんがあえて選んだ乳房再建だから真摯に向き合っていきたい

白石知大(しらいしともひろ)
杏林大学病院 形成外科・美容外科 助教

術式:
・自家組織(穿通枝皮弁 ドナーは腹部・大腿部、広背筋皮弁、腹直筋皮弁)
・インプラント
標準手術時間:
・自家組織 穿通枝皮弁 6~8時間、広背筋皮弁 3~4時間、腹直筋皮弁 6~8時間
・エキスパンダー挿入 1時間、インプラント入れ替え 1~2時間
標準入院日数:
・自家組織 2週間
・エキスパンダー、インプラント 1週間
乳頭・乳輪の再建:
・乳頭:皮弁か乳頭移植 乳房再建手術の3か月以上経過してから再建
・乳輪:タトゥーか植皮 同上

2012年より乳房再建を担当することに

私は、杏林大学医学部付属病院の形成外科で切断指再接合術などの手の外傷や頭頸部再建、顔面神経麻痺の外科治療を担当していました。
2012年ごろ、乳房再建を担当していた前任者の異動に伴い、それまで乳房再建手術の手伝いをしていたこともあって、私にお声がかかりました。インプラントが保険適用になる数年前だったので、乳房再建の認知度が低く乳房再建手術をする方がまだ少ないころでした。

形成外科の医師の間では「乳がん患者さんは精神的にもつらい思いをされている方が多く、診療にはとても気を遣う」という話がありました。しかし実際に担当してみると、そのようなことはなくほかの診療と違いはありませんでした。

患者さんの気持ちをくみとって真摯に向き合っていきたい

私は、乳房再建手術はやらなくていいものだと思っています。
医学的にやらなければいけないものではないので「身体に傷をつけてまでやるかどうか」をじっくり考えていただきたいです。
痛い思いもするし身体に傷もつくけれど、それでも「乳房再建手術を受けたい」という方に対しては、こちらも最大限の治療を行っていきたいと考えています。再建方法は私たちができるすべての選択肢を提示して患者さんに選んでもらっています。患者さんがあえて選んだ道だから、患者さんの気持ちをくみとって真摯に向き合いたいと思っています。

再建の方法を説明する際には、私自身の意見を入れないように心がけています。一般的なメリット、デメリットについてお話をし、それについて患者さんがどう感じるかをうかがってから「あなたの場合は、一般の場合と違ってこういうところがあります」と説明しています。私の考えを聞きたいと尋ねられた場合には、私の考えを説明しています。私も患者さんのために全力を尽くすので、やると決まったらある程度は任せていただけたらと思います。

当院では、再建手術をすすめることはありません。乳腺外科では、乳房を全摘する方に「再建に興味はありますか?」と聞いていて、興味のある方が形成外科にいらっしゃいます。

以前、30代前半の患者さんで、乳房再建後結婚し出産した方がいらっしゃいました。乳房再建をしたことで、少しでも人生に前向きになってくださったのであればうれしい限りです。

コラム
日々の診療のために作ったブレストインプラント比較表

日本の医療機関では、おもにアラガン社とシエントラ社のブレストインプラントを扱っています。それぞれサイズ表記の仕方が異なり、医師が患者さんに提案する際に手間取ることがあります。日々の診療をスムーズにするために2社のサイズ比較表を作ったところ、一般社団法人日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会のサイトから掲載の要望がありました。

乳房再建をする患者さんが「自分には、どのインプラントが合うのか」と検討する際に、参考になったら幸いです。

 

 

 

 

※白石知大先生作成

学会で話題にのぼらないほど乳房再建が当たり前になるのが理想

今後、乳房再建が当たり前に行われるようになり、学会で話題にものぼらないようになるのが理想です。たとえば形成外科学会では、通常の皮膚の移植手術については議題にものぼることはほとんどありません。

いまは形成外科学会で乳房再建に関するセッションがいくつもありますが、それが減ったときに「日本各地で安定して乳房再建ができている」と思えるのかなと思います。

(オンライン取材:2020年10月)

 

患者さんの気持ちに寄り添い、乳房とともに“心”の再建も目指します

森 弘樹(もり ひろき)
東京医科歯科大学附属病院 形成・美容外科 診療科長

術式:
・自家組織(穿通枝皮弁。ドナーは腹部、臀部、太もも)※臀部、太ももからの症例はまれ、または拡大広背筋皮弁
・インプラント
標準手術時間:
・自家組織 穿通枝皮弁 7~8時間、拡大広背筋皮弁 4~5時間
・エキスパンダー挿入 1.5時間、インプラント入れ替え 1.5時間
標準入院日数:
・自家組織 穿通枝皮弁の場合 10日前後、広背筋皮弁の場合 7~10日
・エキスパンダー挿入 7~10日、インプラント入れ替え 5日前後
乳頭・乳輪再建の時期:
・自家組織 再建手術の半年後~
・インプラント 再建手術の3か月~
術式は皮弁の立ち上げとタトゥー、患者さんの要望によっては健側からの移植にも対応
連携病院:
土浦協同病院:外来・手術(隔週月曜日)、横浜市立みなと赤十字病院:手術(隔週水曜日)、湘南藤沢徳洲会病院:外来・小手術(隔週土曜日)

 

乳房再建で一番大切なのは、患者さんの気持ち

私が東京医科歯科大学に着任したのは1999年で、ちょうど形成外科が独立診療科としてスタートし、乳房再建に本格的に取り組むことになったタイミングでした。当時の日本では、乳房再建について今ほど知られていなかったので、比較的早くから取り組んでいたと言えると思います。

乳房再建は、医師にとって“こだわり”を持って取り組むべき診療領域です。しかし、決してこちらの考えを押し付けないように心がけています。整容性やQOL(生活の質)という、答えがひとつではないゴールを目指し、患者さん一人ひとりの考えに寄り添って最善を尽くすことが求められます。近年はインターネット等を通じて乳房再建の情報を得やすくなり、患者さんの中にも詳しく知っている人が増えているように感じます。一方で、乳房再建について全く知らない患者さんもいますので、医師として、それぞれの患者さんに必要と思われる情報は、惜しみなく提供するようにしています。

乳房再建、それは心の再建

乳房再建の方針を決めるにあたっては、患者さんにはできるだけ“具体的なイメージ”をお聞きしています。イメージとは、例えば人工物のインプラントか、自家組織か。自家組織をドナーとするにあたり、乳房以外に傷を負うことについてどう思うか。左右対称にこだわるかどうか。生活の中で大切にしていることは何か、など・・・。もし、どのように考えたらいいかが分からない場合でも、「こんなことを聞いていいのかな」などと思わず、どんな些細なことでも質問を投げかけてください。

乳房を再建する目的は、身体機能を向上させることではなく、患者さんのQOLを向上させることに尽きます。患者さんそれぞれに、再建後の人生の物語があります。

乳房全摘後、20年が経過してから再建したある患者さんからは「こんなに綺麗に再建できるなんて本当に嬉しい!」と喜んでもらえました。他の患者さんからも「趣味のダンスのドレスを着られるようになりました」とか「がんの治療はつらかったけれど、再建した乳房があったので頑張れました」などと報告されると、乳房再建は単に身体の一部を補う手術ではなく、“心の再建”なんだという思いを強くしますね。

これからの課題は、乳房再建をより普及させていくこと

東京医科歯科大では、乳腺外科と形成外科は隣り合わせの診療科で、声かけひとつで連携できるという、乳房再建に携わる医師や患者さんにとって恵まれた環境にあります。一方、日本全体でみると、双方の診療科の連携はまだ道半ばと言えます。米国では乳がんに罹患した患者さん(※1)のうち30%程度が乳房再建すると言われていますが、日本では9% (※2)です。 日本人特有の気質として、性的なことをあまり口にしたがらない人が多く、乳房を再建したいという希望を表に出しにくいと考える人も多いのかもしれないと推察しています。しかし、日本は医療先進国でもあります。まずは欧米並みに、乳房再建を選択肢のひとつとして広めていくためには、乳がん治療の入口である乳腺外科での診療時に“選択肢”として患者さんに提供することも重要ですし、社会全体で、乳房再建に対する情報を広め、理解を深めることも重要でしょう。

(※1)乳房の全摘手術と温存手術を受けた人の合計
(※2)全摘手術を受けた患者さんのみを対象とすると17%

(2020年10月 オンライン取材)