第13回 2021年9月5日 E-BeCオンラインセミナー「人工物再建最新事情」

第13回E-BeCオンラインセミナ【乳房再建手術Hand Bookシリーズ】「人工物再建最新事情」を開催しました。

講師は人工物(シリコンインプラント)再建の第一人者 ブレストサージャリークリニック院長 岩平佳子先生。

人工物による乳房再建の歴史から、2019年のアラガン・クライシスまでどのように変わっていったか、アラガン社、シエントラ社のインプラントの特徴、放射線照射と乳房再建、被膜拘縮についてなどについて多数の症例写真を用いて、初めて聞く人にもわかりやすくお話してくださいました。

《概 要》
日 時:2021年9月5日(日)12:00~13:30
講 師:医療法人社団ブレストサージャリークリニック 院長 岩平佳子先生
参加費:1000円
参加者:計74名
対 象:乳がん経験者、医療従事者、乳房再建に関心のある方
協 力:ティーペック株式会社

≪オンラインセミナーの様子≫

毎年のマンモグラフィ検診で問題なし 違和感を感じて受診し、高濃度乳房と告げられた

京都府 YYさん(50代)

 

 

 

 

 


手術方式
:「二次二期再建」

・乳がん手術
2018年12月 左乳房全摘手術(皮下乳腺全摘/乳頭乳輪切除)
2019年1月 皮膚の追加切除
執刀 足立乳腺クリニック(旧沢井記念乳腺クリニック) 新藏信彦先生
・乳房再建手術
2019年3月 エキスパンダー挿入
2020年3月 インプラントに入れ替え (ラウンド型スムースタイプ)
2021年1月 脂肪注入により修正
執刀 京都府立医科大学 形成外科 素輪善弘先生
・乳頭乳輪再建手術
2021年3月 乳頭再建(皮弁立ち上げ)
2021年5月 タトゥー
2021年6月 タトゥー仕上げ
執刀 京都府立医科大学 形成外科 素輪善弘先生

術前治療:なし
術後治療:ホルモン剤(タモキシフェン)5年間(服薬継続中)

セルフチェックで違和感を感じ、すぐに乳腺外科を受診

私は、毎年マンモグラフィで乳がん検診を受けていたので「乳がんにはならないだろう」と思っていました。それまで、家事に仕事にと忙しく、乳房のセルフチェックをしたことはなかったのですが、2018年8月ごろ、たまたまセルフチェックをしたところ左胸に違和感を感じました。

「毎年マンモグラフィしているから大丈夫」と思ったのですが、なんとなく気になって近くの病院に行ったところ、すぐに乳腺外科を紹介されました。そこでマンモグラフィでは写らない、高濃度乳房(デンスブレスト※)だと言われ、「がんが乳房全体に広がっているので全摘しなければいけない」と言われました。

※高濃度乳房(デンスブレスト)についてはこちら

乳がんの診断を受け、はじめて「死」を意識、恐怖と覚悟を行ったり来たりし自身の心の弱さと強さを繰り返し感じました。この先、自分がどうなるのかわからない状況だったので、大学生だった娘にはなかなか言えませんでしたが、手術の1か月前にようやく手術することを伝えました。

当時、私は仕事・プライベートでいろいろと大変なことがあり、そんななか乳がんになってしまったので、娘が「ママがしんどいときに、近くにいて気づかなくてごめんなさい」と泣きながら言ってくれたので、治療をがんばろうと思いました。
その言葉を思い出すと今でも感謝の気持ちでいっぱいになります。

「切除したらまた走れるよ」先生の言葉に勇気づけられた

私は趣味でランニングを12年ぐらい続けており、毎年フルマラソンに参加しています。乳がんが見つかった2018年12月にホノルルマラソン、年明けに京都マラソン、名古屋ウィメンズマラソンの予定を入れていたので、先生に「ホノルルマラソンを走らせてほしい。ホノルルマラソンが終わってから手術をさせてください」とお願いしたところ、先生は私の希望を快く聞いて対応してくださいました。

そのときは乳がんが悪性なのか良性なのか、術後マラソンを続けられるのかがわからなかったので、とにかくホノルルマラソンを走りたかったのですが、先生は「切除したら、また走れるから大丈夫」と勇気づけてくれました。手術後も走れるというのがうれしくて、京都マラソン、名古屋ウィメンズマラソンが終わってから今後のことはゆっくり考えようと思うことにしました。

手術は、左乳房を全摘し、皮膚の追加切除をしました。まずは悪い部分を切除して、病理検査の結果を聞いてからその後のことを考えればいいかなと思いました。そのときは生きるか死ぬかわからなかったし、病気が今後どうなるかわからなかったので、胸を再建するなんてまったく考えられませんでした。

再建しようと思ったきっかけは、マラソンをしているときの不便さ。片方の胸がないとブラジャーが上がってきてしまい、走りながらブラジャーを調整しないといけないんです。そして、ゴルフや水泳、フィットネスクラブで着替えるときも、こそこそと隠れなくちゃいけない。

「やっぱり胸を再建しなければいけないな」と思い、自家組織とインプラントのどちらがよいかと主治医に相談したところ、主治医は、「運動するのであれば、海外のスポーツ選手はインプラントを入れている人が多いから、まずはインプラントでやってみたら」とおっしゃいました。自家組織だと、お腹も切らなければいけないし、治るのにも時間がかかるからと言われたので、インプラントで再建することにしました。

2019年3月にエキスパンダーを入れ、その年の10月にインプラントの手術が決まっていたのですが、アラガン社のインプラントリコール問題があり、手術の前日に主治医より電話をもらい「こういう状況だから、手術をやめておきましょう」と言われました。手術はそのまま行われるものだと思っていたので「エキスパンダーが入っているのに」という気持ちでしたが、なるようにしかならないと延期することを決めました。

私はエキスパンダーが入っている胸を気に入っていて、これでもいいと思っていたぐらいです。ただ、いずれは入れ替えなければいけないので、保険対象外のものでもいいと思っていたのですが、先生からの連絡を待って、2020年3月に入れ替え手術を行いました。

乳がんになって自分を見つめ直した。これからの人生を大事に生きていきたい

私は女性と関わる仕事をしていることもあり、2014年から毎年、ピンクリボンキャンペーン活動とイベントを行い、認定NPO法人乳房健康研究会に売上金の一部を寄付しています。こういう活動をしていたにもかかわらず乳がんになったので「検診に行っていたのに」という思いがずっと自分の中にあります。なので、この活動では「マンモだけじゃなくエコーも一緒に受けようね」と話しています。自分が乳がんになったことで、これまでとは違うアドバイスができるようになりました。

先日、東京にいる娘と熱海旅行に行き、温泉で再建した乳房を見てもらいました。乳頭ができたから温泉にも気兼ねなく行けるように。
乳頭がないときは、インプラントで再建した乳房に対して「こんなん、なくてもいいかな」と思っていました。泳ぐときもごろんごろんとインプラントが動いて違和感があるんです。「インプラントを入れたまま、一生過ごすのか・・・」と思った時期もありましたが、乳頭ができたときに「うわぁ~すごい!」と感激しました。
主治医に作ってもらった乳頭があまりにも素晴らしいので、「先生って頭も賢いし、乳房も再建してくれるし、縫い物(吻合手術)もできるし、タトゥーのようなアートもできるし、天才やね!」と言ったら、先生は笑っていました。私のためにいろいろアドバイスをしてくださる、いい先生に出会うことができました。

いま、左側にはラウンド型のインプラントが入っていて丸く、右側は自然と下垂していく。どうしても左右差があるし、左側を触ったら冷たい。もし今後、再建技術がどんどん進んでナチュラルな乳房が再建できるなら、インプラントを脂肪注入か自家組織で再再建してみたいとも思っていますし、今、主治医が研究されている、インプラント等に代わる乳房再生医療がもっと進み、高い安全性と生着率が期待できる脂肪組織で乳房を再建することができたら、こんなに幸せなことはないですよね。

私自身、乳がんになったときに不安と心配でいっぱいになり、治療のことで精一杯で再建のことは考えられませんでした。でも、乳がんになったからといって人生が終わるというわけではなく、そこからまた新しい生活が始まります。一人の人間、一人の女性として美しく輝いて生きていけるようなきっかけが大事だと思います。乳房再建は私にそのきっかけを与えてくれました。今後、全国の医療施設で乳がんの治療だけではなく再建手術にも力を入れてもらって、患者さんには乳がん治療と同時に再建手術についても知ってもらえるような環境ができたらうれしいです。

私は乳がんになったことで、自分を見つめ直すことができました。これからの人生を大事に生き、がんばろうと思いました。年齢をどんどん重ねていくけれど、胸を再建したことで女性らしくいられるのだと感じています。

二人に一人ががんになる時代、乳がんになったからといって落ち込まずに乳房再建という選択肢があるということを知って、自信をもって生きていってほしいと思います。

(オンライン取材:2021年7月)

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第12回 2021年8月7日E-BeCオンラインセミナー「放射線をあてた皮膚ってどうなるの?~放射線照射後のスキンケア~」

第12回E-BeCオンラインセミナ【乳房再建手術Hand Book シリーズ】「放射線をあてた皮膚ってどうなるの?~放射線照射後のスキンケア~」を開催しました。

講師は放射線治療の専門家 久留米大学病院 放射線腫瘍センター長 淡河恵津世先生。

放射線治療の基本、皮膚の状態がどのように変化したいくか、なぜ保湿が必要かなど、具体的にそして詳細にお話いただきました。
放射線照射後のケアについては、病院で指導を受ける機会が決し多くはありません。
皮膚の表面が落ち着くと気にかけなくなってくることが多いですが、照射終了直後からのケアがとても大切です。
医療従事者の皆さんにも広く知っていただきたい内容でした。

《概 要》
日 時:2021年8月7日(土)12:00~13:30
講 師:久留米大学病院 放射線腫瘍センター長 淡河 恵津世先生
参加費:1000円
参加者:計61名
対 象:乳がん経験者、医療従事者、スキンケアに関心のある方
協 力:ティーペック株式会社

≪オンラインセミナーの様子≫

8月21日 E-BeC×CNJ共催「乳房再建セミナー」@ジャパンキャンサーフォーラム2021

ジャパンキャンサーフォーラム2021 乳房再建セミナー オンライン開催
8月21日(土)12:00-12:45
テーマ:「進化、多様化する乳房再建:自分に合った方法を見つけるには?」
講師:冨田興一先生(大阪大学医学部附属病院 形成外科)
詳細・申し込みはこちら

乳房再建(〜12:45)

乳房再建セミナー後、12:45-14:15
「全員集合!どこでもドアで交流会へ!」に出展
スペシャルゲスト:冨田興一先生(大阪大学医学部附属病院 形成外科)

全員集合! どこでもドアで交流会へ!(〜14:15)

 

術式決定のプロセスでは、患者さんがイメージしやすい言葉を選び、時間をかけて説明します

宮下宏紀(みやしたひろき)
がん研有明病院 形成外科 副医長

術式:
・自家組織(穿通枝皮弁 ドナーは腹部・大腿部、症例によって広背筋皮弁、皮下動脈皮弁も適応)
・インプラント
・脂肪注入(乳房再建、補完的に実施)
標準手術時間:
・自家組織 穿通枝皮弁 5~7時間
・エキスパンダー挿入 1時間
・インプラントへの入れ替え 1.5時間
標準入院日数:
・エキスパンダー(二次再建)、インプラント入れ替え  4日
・自家組織 穿通枝皮弁 1週間~10日
乳頭・乳輪再建の時期:
・再建手術の3か月後(自家組織で再建する場合は1年後を推奨)
連携病院:
・新宿西口 耳鼻いんこう科 形成外科(毎月第4金曜日)
・国立国際医療研究センター病院 形成外科(毎月第3水曜日)

できるだけキャッチーな言葉を選び、「伝わる」ことにこだわる

乳房再建には色々な術式があり、術式を決定するにあたっては、患者さんが必要とする医療情報を十分提供し、ご自身でしっかり納得していただくことがとても大切です。患者さんご自身が“術後の自分の乳房”を明確にイメージできるまで、何度でも外来でお話するようにしています。緊張している様子の患者さんであれば、「どうぞメモをとってください」と促すこともありますし、再建後の姿をイメージしやすいように、「裸になったときの乳房と、洋服を着ている時の乳房のどちらを重視しますか」という質問を投げかけたりすることもあります。患者さんの表情をよく見て、理解が薄いようであれば言葉を変えたりするなど、工夫して伝えることを惜しみません。

私は学生時代から躰道(たいどう)という武道に打ち込み、世界選手権での優勝経験もあります。近年は指導者として母校で教えていることもあり、「上手な人の動きを言語化する」ことや、「どうしたら相手に意図が正しく伝わるか」を重視してきました。躰道の指導で培ってきたノウハウを、患者さんとのコミュニケーションに活かせていることは、自分の強みだと考えています。

患者さんの前向きな声がモチベーションの源泉

形成外科医として駆け出しの頃、自分には誇れる技術がないことに思い悩んでいました。赴任先の佐久市立国保浅間総合病院(長野県)形成外科で一人医長を務めていた2009年、信頼のおける先輩医師から背中を押され、また、がん研からもサポートを受けて乳房再建を始めることに。ゼロからのスタートだったので緊張で眠れない日々もありましたが、当時の患者さんたちは「乳房再建のおかげで人生が変わりました」「本当に再建してよかった」と満面の笑顔で言ってくださり、その後も折に触れて交流が続きました。一緒に歩んできた患者さんの“生”の声…それが私のモチベーションの原点です。

乳房再建術は、患者さんの人生を変えることができる素敵な手術です。これまで乳房再建医として育ててもらった恩返しをしたい。次世代を担う、技術力のある外科医をがん研から輩出するため、後進の指導にも力を入れています。

がん研に外来で訪れる患者さんは不安を感じたり緊張されたりしていることも時に見られます。形成外科では、“砂漠のオアシス”のような、“街の中の止まり木”のような場所を提供したいと思っています。乳がんで乳房を摘出することになった患者さんに対して、ポジティブな提案ができるのが乳房再建術ですし、そのために患者さんには「もっと頑張ろう」と前向きな気持ちになってもらいたいですね。

“患者さんも術者も安眠できる手術”を提供したい

乳房再建術で大切にしているのは、基本的なことではありますが、合併症を無くすことです。合併症にも色々ありますが、例えば手術時間が長くなると麻酔薬や点滴・輸液の投与量が多くなり、患者さんの不調の原因になるなど、様々なリスクが高まります。そのため、同一内容であれば手術時間は短い方が望ましいとされており、私もかつては“早さ(手術時間の短さ)”を是としていた時期もありました。しかし最近では「手術の早さは自らの鍛錬の結果として得られるものであり、目的ではない」と考えています。安全で整容性に優れた乳房再建のためには、術中に何度も体位を変えて乳房の形を検証したり、血流をリアルタイムに評価する装置で血管吻合部の状況を見たりする時間は惜しみません。それでも、できるだけ短時間で手術を終えることができるよう、絶えず技術を磨き続ける必要があります。手術を行ったその日の夜に、患者さんはもちろんですが、術者も安眠できるのが理想ですよね(笑)。当院では、平日は毎日遊離皮弁による乳房再建術(マイクロサージャリーでの血管吻合を伴う自家組織での乳房再建術)を行っていますので、医療従事者が安心して経過観察できるということは、サステイナブルな医療の提供という観点でも重要です。

今後取り組んでいきたいこととしては“知覚の再建”です。乳房という部位の特性上、また患者さんのQOLの観点からも、再建後に触感覚を取り戻してもらいたいと、がん研全体で注力している分野です。具体的にはあばらと腹部の神経を別の血流でつなげる処置になりますが、すでに臨床段階にあります。今後も乳房再建術の到達点をどんどん上げていき、さらに多くの患者さんの人生を応援していきたいと考えています。

(2021年7月 オンライン取材)

 

第11回 2021年7月4日 E-BeCオンラインセミナー「あなたの“暮らし”も支える口腔ケア」

第11回E-BeCオンラインセミナ【乳房再建手術Hand Book シリーズ】「あなたの“暮らし”も支える口腔ケア」を開催しました。

講師はがん治療の口腔ケアの第一人者、師岡県立静岡がんセンターの百合草健圭志先生。

日頃のちょっとしたケアで大きなトラブルを防ぐことができるということを、丁寧に解説していただきました。
口腔ケアは身近でわかったつもりになっていることも多いのですが、実はよくわっておらず、間違ったケアをしていることがあることもわかります。
がん治療中のみならず、その後の療養生活、そしてこれからの“暮らし”のために必要な口腔ケアについて学ぶことができました。

《概 要》
日 時:2021年7月4日(日)12:00~13:30
講 師:静岡県立静岡がんセンター 歯科口腔外科 部長
百合草健圭志先生
参加費:1000円
参加者:計30名
対 象:乳がん経験者、医療従事者、口腔ケアに関心のある方
協 力:ティーペック株式会社

≪オンラインセミナーの様子≫